家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
めん•山羊の雌性性活動の人為支配に関する研究
吉岡 善三郎
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1961 年 7 巻 3 号 p. 93-102

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抄録

1. 繁殖期における初発情開始の時期はめん•山羊とも年により多少相違するが, めん羊では早いものが8月下旬, 一般には9月に入つて開始するものが多く, 10月になつてなお発情を見ぬものは少い。山羊では泌乳の関係上めん羊より幾分遅れる傾向があり, 9月に開始するものが多いが, 10月に入つてからのものも少くない。1月末までは大部分のものが性周期を繰返す。
2. 非繁殖期 (3月~8月) の卵巣には常時中~大卵胞が見られるが, 一般に排卵は起らない。卵胞はその発育のいろいろの過程で組織の異常化を生じ, 変性卵胞となつて萎縮退行するためである。したがつて卵巣には正常に発育した卵胞と変性卵胞が併存している場合が多い。
3. 非繁殖期にも正常に発育した卵胞が見られるので年により環境の変化が一部のものの自然発情を誘起する場合がある。
4. 短日処置により供試33頭中28頭に非繁殖期中の発情を誘起したが, 発情誘起までに48~113日を要した。短日処置による刺戟はその作用が緩慢であるため,他の環境要因によつても影響を受ける。
5.ホルモン処置による方法は刺戟が急激であり, 適期に適量を用いれば数日後に適度の排卵が得られる。この場合性腺刺戟ホルモンのみでは発情のない排卵を誘起する。黄体ホルモン総量135mgを6日間前処置の後性腺刺戟ホルモンの適量 (PMS450M. U.,HCG500I. U.,PMS+HCG500~1000I. U.) 処置では卵巣の大さ正常で, 発情を伴う適度の排卵が得られた。
6.PMS900M. U. 処置した場合供試18頭中10頭の発情を認めたが, 9頭に交配し3頭が受胎した。この場合は卵胞が過剰に発育して変性卵胞を生じ易く, 卵巣が正常の機能を有し難いためと考える。
7.繁殖期における卵巣は性周期の動きと深い関係がある。めん羊では排卵後数日間は大卵胞が見られない。山羊では大卵胞を有するものがあるが, これらの大卵胞は変性卵胞であるためやがては退行するものである。性周期第7日以後には正常な大卵胞を有するものが見られるようになる。
8.黄体ホルモンによつて性周期を延長する場合, めん羊では性周期第10~15日より7~11日間, 10mg宛毎日注射したもの, 山羊では性周期第15~16日より8~10日間同様の処置したものが成績良好であつた。
9.めん羊の黄体期に性腺刺戟ホルモン (PMS+HCG1000I. U.) を処置して性周期内の排卵は得られたが発情を伴わなかつた。

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