家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
非繁殖季節に発情を誘起された雌羊の受胎におよぼす雄羊の性行動
福井 豊椿 実小林 正之小野 斉
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1986 年 32 巻 4 号 p. 195-201

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抄録

47頭のサフォーク種雌羊について,非繁殖季節に60mgの6-methyl-17-acetoxyprogesterone(MAP)を含む膣内スポンジと600IU妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)で発情誘起した場合の受胎におよぼす雄羊(4頭)の性行動の影響について検討した。処理後11または12頭の雌羊に対して雄羊1頭を同居させ,48時間連続観察を行った。観察項目は発情雌羊頭数,発情雌羊1頭当りの雄羊の乗駕回数,射精回数雄羊別の平均射精間隔(時間),乗駕回数/射精回数(比率),射精順序である。
雄羊の性行動は雌羊により有意に変動した。雄羊4頭(A:4才,B:3才, C:2才, D:15か月齢)の平均乗駕回数および射精回数はそれぞれ12.6と3.3回,35.7と6.6回, 8.4と1.8回, そして36.0と2.5回であった。乗駕回数/射精回数については,最も若齢の雄羊(D)が14.6と他の3頭のそれよりも有意に(P<0.01)高かった。雌羊に対する雄羊の射精順序も雄羊の個体により異なり,雄羊Dはある特定の雌羊に集中して射精した。このような雄羊の性行動は雌羊の発情出現率に有意な差を示さなかった。しかし,雄羊Aと雄羊Dの受胎率に有意な(P<0.05)差が見られた(75.0%と27.3%)。また,未経産雌羊の受胎率は経産雌羊よりも有意に(P<0.025)低かった(27.8%と71.4%)。
以上の結果から,非繁殖季節に発情誘起された雌羊について自然交配を行う場合,雄羊の性行動および雌羊の経産の有無を考慮に入れる必要があると考えられた。

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© 日本繁殖生物学会
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