家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
卵巣嚢腫牛の下垂体および卵巣機能について
近藤 昌弘田谷 一善本谷 真澄渡辺 元笹本 修司星野 邦夫
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1990 年 36 巻 1 号 p. 17-25

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抄録
臨床症状が明らかである乳牛の個体別嚢腫内腔液中インヒビン,プロジェステロン,テストステロンおよびエストラジオールー17β濃度および同一牛の血液中のFSH,LH,ステロイドホルモンを測定し,正常に発情周期を示す乳牛の値と比較検討した。牛卵胞嚢腫は前報の如く穎粒層細胞の機能によって3つの型,即ち,卵胞機能充進型(A),卵胞機能退行型(B)及び内分泌活性喪失型(C)に分類した。その結果,次の事実が判明した。
1.血中LH濃度は,卵胞嚢腫の型により若干の差はみられるが,いずれの嚢腫型においても発情周期中の基底レベルよりも高く,黄体嚢腫および嚢腫様黄体では基底レベルと差のない値を示した。血中LH濃度は,血中プロジェステロン濃度と負の相関関係を示した。
2.血中FSH濃度は,全ての卵胞嚢腫,黄体嚢腫,嚢腫様黄体牛で発情周期中の基底レベルと差のない値を示した。
3.嚢腫卵胞液中のインヒビン活性の高い牛のみならず,嚢腫卵胞液中にインヒビン活性を認められないものでもFSH濃度が基底レベルに抑制されていた。これは嚢腫卵胞以外に存在する卵胞からのインヒビン分泌が関与するものと推察された。
4.インヒビン活性を欠くC型卵胞嚢腫内腔液にはプロジェステロンレベルの高いものが多く,内分泌機能を失うものは稀であった。従って,C型卵胞嚢腫は穎粒層細胞機能喪失型と表現する方が適正であると判断された。
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© 日本繁殖生物学会
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