Journal of Reproduction and Development
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ニホンツキノワグマ(Selenarctos thibetanusjaponicus)における性成熟と精子形成にかかわる幹細胞
小松 武志坪田 敏男岸本 真弓濱崎 伸一郎千葉 敏郎
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1994 年 40 巻 6 号 p. j65-j71

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抄録

ニホンツキノワグマ(Selenarctos thibetanus japonicus)の捕殺個体27頭から採取した精巣と,捕獲個体13頭の精巣から採取したバイオプシー材料を用いて,性成熟年齢と,未成熟および成熟個体における精子形成の開始および至開始にかかわる幹細胞について検討した.
精巣の大きさ,重量および精細管直径の各値は2~3歳において急激に上昇し,また精巣の組織学的観察により成熟と判断された個体は,1歳で0%,2歳で50%,3歳以上で100%であった.よって生理的な性成熟(春機発動)年齢は,2~3歳であると推定された.
未成熟個体の精細管中には,セルトリ細胞と巨大円形細胞のみが観察された.この後者の細胞は他種の動物で報告されているGonocyteと形態学的に一致した.よってこの細胞は未成熟期から精子形成を開始するための幹細胞であると推察された.
一方成熟個体の精細管中には,Gonocyteと類似する巨大細胞が観察され, Gonocyte-like cellと名付けられた.この細胞は非繁殖期の精細管中に急激に増加した.このような性質は他種の動物で報告されている未分化型A型精祖細胞の性質と類似した.よってこの細胞は未分化型A型精祖細胞であり,成熟期の非繁殖期から精子形成を再開するための幹細胞であると推察された.

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