日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-37
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内分泌
日長変化とSalsolinolによるヤギのプロラクチン分泌反応に関する研究
*八重樫 朋祥澤田 建中嶋 侑佳金 金斉藤 隼人後藤 由希Ahmed Ezzat Ahmed澤井 健橋爪 力
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抄録

【目的】ドーパミンの誘導体、Salsolinol (SAL)は新しいプロラクチン(PRL)放出因子である。しかし、その分泌特性や機構については明らかでない。一方、反芻家畜のPRL分泌は、日長により変化する。本研究は、日長とSALによるPRL分泌との関係を知るための実験系を確立するために、ヤギを人工照明下で飼養し、SAL、TRH、ドーパミン拮抗薬(スルピリド)を投与して自然環境飼育下のヤギのPRL分泌反応と比較した。
【方法】本実験では、室温を20℃に設定し、成熟雌シバヤギを8時間明、16時間暗の人工照明下で飼養した(短日条件)。これらのヤギの頸静脈内にカテーテルを留置し、SAL(5 mg/kg b.w.)、TRH (1µg/kg b.w.)、スルピリド(0.1 mg/kg b.w.) をそれぞれ投与して血中のPRL濃度の変化を調べた。一方、7月に自然環境下で飼養しているヤギ(長日条件)にSAL、TRH、スルピリドを投与し血中PRL濃度を測定して、両群における血中PRL濃度の変化を比較した。
【結果】(1) 短日条件の人工照明下で飼養したヤギにおいて、SAL、TRH、スルピリドの投与は血中PRL濃度を有意に上昇させた(P<0.05)。PRL放出量にはSAL、TRH、スルピリドによる差は見られなかった。(2) 長日条件の自然環境下で飼養したヤギにおいて、SAL、TRH、スルピリドは血中PRL濃度を有意に上昇させた(P<0.05)。また短日条件下のヤギと同様にPRL放出量にはSAL、TRH、スルピリドによる差は見られなかった。しかし長日条件下で飼養されたヤギではSAL、TRH、スルピリド投与によるPRL放出量は短日条件下のヤギに比べ有意に多かった(P<0.05)。
【結論】本研究の結果は、SAL は他のPRL放出刺激物質と同様に短日及び長日条件下でPRLを放出させること、またその放出反応は長日期で高まることを示す。人工照明下における本実験系の有効性が確認されたので、現在照明時間を変えてPRLの分泌反応を検討している。
本研究は平成21年度科学研究費補助金(21380169)で行われた。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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