日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-47
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内分泌
ホルスタイン種経産牛へのキスペプチン末梢投与による黄体形成ホルモン分泌刺激効果
*勝野 伸吾大蔵 聡佐藤 精大橋 秀一小林 一雄難波 陽介上野山 賀久束村 博子前多 敬一郎
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抄録

【目的】キスペプチン(メタスチン)は、視床下部においてGnRH分泌制御に重要な役割を担う神経ペプチドである。全長キスペプチンのうちC末端側10個のアミノ酸配列(Kp-10)が生理活性を示し、末梢投与でも性腺刺激ホルモン分泌効果が得られることから、ウシでの繁殖制御技術への応用が期待される。本研究では、ホルスタイン種成熟雌ウシの静脈内または筋肉内にKp-10を投与し、血中黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度に及ぼす影響について検討した。【方法】乾乳期のホルスタイン種経産牛3頭を供試し、CIDRを用いた発情誘起処置による発情開始後9~16日に試験を行った。採血は頚静脈に留置したカテーテルを通じて10分間隔で12時間または8時間行った。静脈内投与試験では、採血開始から8時間後に、ウシ型Kp-10(0.02または0.2 nmol/kg)または対照として生理食塩水を留置カテーテルから投与した。筋肉内投与試験では、採血開始から4時間後に、ウシ型Kp-10(0.2 nmol/kg)または対照として生理食塩水を臀部筋肉内に投与した。血漿中LHおよびFSH濃度はRIAにより測定した。【結果】0.2 nmol/kgのKp-10静脈内投与により、血中LH濃度の上昇がみられた。この時のKp-10投与後1時間における血中LH濃度のarea under the curveは投与前1時間と比べて有意な増加が認められた。0.02 nmol/kgのKp-10静脈内投与では、血中LH濃度に変化はなかった。一方、0.2 nmol/kgのKp-10筋肉内投与では、LHの分泌動態に明瞭な変化はなかった。また、Kp-10の静脈内および筋肉内投与による血中FSH濃度に変化はなかった。以上より、キスペプチンが乾乳期ホルスタイン種経産牛においてもLH分泌を刺激することが確認され、新たな繁殖刺激剤として応用できる可能性が示された。本研究は生研センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」の一部として実施した。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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