日本繁殖生物学会 講演要旨集
第103回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-29
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内分泌
絶食時のキンギョ脳下垂体におけるGPR120 mRNA発現量について
*森山 隆太郎宮前 友紀子森井 祐一郎加川 尚
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抄録
【目的】G-protein-coupled receptor 120 (GPR120) は血中遊離脂肪酸をリガンドとするGタンパク共役型受容体である。これまでに当研究室では、マウス下垂体の性腺刺激ホルモン産生細胞において、血中遊離脂肪酸濃度が上昇する絶食時にGPR120 mRNA発現量が増加することを明らかにしている。本研究では、マウスと同様に硬骨魚類であるキンギョ脳下垂体のGPR120も絶食時に発現量が増加すると仮説提唱し実験を行った。
【方法】実験には1年齢の成熟和金を用いた。動物を正常給餌群と絶食群に分け、明暗と水温をコントロールした水槽で飼育した。10日間飼育した後、脳下垂体より抽出したRNAを用いてreal-time PCR法でGPR120 mRNA発現量を定量した。また、絶食の効果を調べるために、飼育期間前後のキンギョの体重と血糖値・血中非エステル型脂肪酸 (NEFA) 濃度を測定した。
【結果および考察】RT-PCR法およびサイクルシークエンス法によりキンギョ脳下垂体にGPR120 mRNAの存在が明らかとなった。脳下垂体のGPR120 mRNA発現量を定量した結果、絶食群の雄において正常給餌群に比べて統計的有意にGPR120 mRNA発現量が増加した。一方、雌では統計的有意な増加は観察できなかった。また、血糖値と血中NEFA濃度を測定した結果、10日間の絶食による有意な濃度変化は観察できなかった。雄においてGPR120 mRNA発現量が統計的有意に増加したことから、マウスと同様に硬骨魚類であるキンギョにおいても脳下垂体のGPR120は、絶食時に何らかの生理的役割を持つと示唆された。ただし、絶食により血中NEFA濃度が増加しなかったことから、キンギョでは10日は絶食期間として不十分であり、そのため、雌でGPR120 mRNA発現量の増加が観察できなかった可能性がある。現在、絶食期間を延ばした実験を行っている。
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© 2010 日本繁殖生物学会
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