日本繁殖生物学会 講演要旨集
第104回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-54
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卵巣
ウシステロイド合成細胞の増殖能に関する研究
*吉岡 伸ACOSTA Tomas J作本 亮介奥田 潔
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抄録

【目的】ウシにおいて排卵後に形成される黄体は、10 日間でその重量が約 20 倍に成長することが知られているが、この黄体の成長は黄体細胞の増殖ではなく、サイズの増加であると考えられている。近年、霊長類の黄体細胞に細胞増殖の指標である Ki-67 タンパク質の発現することが報告されたことから、ウシ黄体細胞の増殖する可能性が示唆されるが、その詳細は明らかではない。そこで本研究では、ウシ黄体の形成機構を明らかにする目的で、黄体細胞の増殖能について検討を行った。 【方法】発情周期を通じた黄体組織における Ki-67 タンパク質の局在を免疫組織化学により調べた。また、局在が認められた周期について、Ki-67 と黄体細胞の指標となる 3β-HSD の二重染色を行った。次に中期黄体から単離した黄体細胞を播種し、培養 1、4、7 および 10 日後の DNA 含量を DNA assay により検討すると共に、黄体形成ホルモン (LH) 添加区を設け、黄体細胞の増殖能に及ぼす LH の影響を調べた。さらに、発情周期を通じたウシ黄体組織における Pten、Cyclin D2 および p27kip1 (p27) mRNA 発現を RT-PCR 法により検討した。 【結果】初期、形成期、中期、妊娠期黄体において、Ki-67 陽性細胞が確認された。これらの周期について、Ki-67 および 3β-HSD の二重染色を行った結果、いずれの周期においても黄体細胞に Ki-67 陽性細胞が認められた。培養中期黄体細胞は、時間依存的に増殖し、この黄体細胞の増殖能は LH 添加により有意に減少した。Pten mRNA 発現量は初期黄体において低かった。また、Cyclin D2 mRNA 発現量は形成期において有意に高く、p27 mRNA 発現量は初期に低い傾向を示した。さらに、細胞増殖を促進する Cyclin D2 と増殖を抑制する p27 mRNA 発現量の比をとった結果、初期および形成期において有意に高かった。本研究より、ウシ黄体ステロイド合成細胞の増殖する可能性が強く示唆された。また、細胞の増殖は発情周期初期、形成期で活発であることが示された。

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© 2011 日本繁殖生物学会
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