日本繁殖生物学会 講演要旨集
第104回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-55
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卵巣
ウシ黄体における galectin-3 の発現およびその役割に関する研究
*羽柴 一久法上 拓生吉岡 伸作本 亮介小林 純子ACOSTA Tomas J奥田 潔
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抄録

【目的】Galectin は、複合糖質の糖鎖中にある β-galactoside 結合を認識することにより細胞の接着や移動、分化、増殖およびアポトーシスなどに関与する lectin である。ヒトならびにマウス黄体では galectin-3 が周期的な変化を伴いながら発現することが報告されている。 マウス黄体において、 galectin-3 mRNA は他の周期と比較して退行期に顕著に発現することが報告されており、黄体退行時のアポトーシスに関与していることが示唆されている。しかし、ウシ黄体における galectin-3 の発情周期を通じた発現変化およびその役割については全く明らかにされていない。 本研究では、ウシ黄体の機能調節における galectin-3 の生理的役割を明らかにする目的で、発情周期を通じたウシ黄体組織における galectin-3 mRNA およびタンパク質発現量の変化を調べるとともに galectin-3 タンパク質の局在を調べた。
【方法】卵巣を肉眼的所見により、排卵日を0日として、排卵後の日数で五つの周期 (黄体初期: Days 2-3、黄体形成期: Days 5-6、黄体中期: Days 8-12、黄体後期: Days 15-17、黄体退行期: Days 19-21) に分類した。その後、各周期における黄体組織の galectin-3 の mRNA ならびにタンパク質発現を定量的 RT-PCR法、Western blot法によりそれぞれ検討した。また、発情周期を通じた黄体組織を用いて、galectin-3 タンパク質の局在を免疫組織化学により調べた。
【結果】ウシ黄体組織における galectin-3 mRNA ならびにタンパク質発現はともに、他の周期と比較して退行期で有意に高かった。また、免疫組織化学では、galectin-3 は発情周期を通じて黄体細胞に発現し、退行期に最も顕著な発現を示した。一方、血管内皮細胞には発情周期を通じて顕著なgalectin-3 発現は認められなかった。  本研究の結果より、galectin-3 の黄体退行機構への関与が考えられたが、galectin-3 が黄体維持因子あるいは黄体退行因子として作用するのか不明であるため、今後は galectin-3 発現とアポトーシスとの関連について調べる。

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