日本繁殖生物学会 講演要旨集
第104回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-69
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性周期・妊娠
ウシ栄養膜細胞系における細胞増殖因子の発現解析
*古川 翔木崎 景一郎細江 実佐林 憲悟高橋 透牛澤 浩一橋爪 一善
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抄録
【目的】栄養膜細胞は着床期に著しい増殖と分化を繰り返し,胎盤の形成を主導する。この過程には様々な母体側,胎子側の因子が関与している。中でも増殖因子は,細胞の増殖や分化に直接関与する要因として重要である。例えばウシでは,線維芽細胞増殖因子 (FGF)2が栄養膜細胞におけるインターフェロン・タウ(IFNτ)の分泌を促進する因子として報告されているが,詳細な機構は明らかでない。本研究では,ウシ栄養膜細胞系に発現するFGF,上皮細胞増殖因子 (EGF)に関連する各種増殖因子の遺伝子発現を解析した。【材料及び方法】ウシ胚盤胞から作成したウシ栄養膜細胞系(BT-1, BT-A~L)から総RNAを抽出し,FGF, EGFに関連する遺伝子の発現を定量的RT-PCR により解析した。また,妊娠14から23日の伸長期胚,若しくは受胎産物の栄養膜から総RNAを抽出後,各種増殖因子とその受容体の遺伝子発現をウシオリゴDNAマイクロアレイにより解析し, BT細胞系における遺伝子発現と比較検討した。【結果及び考察】FGF2はBT-A, -C及び-1の細胞系で他に比較して高い発現を認め,これ以外の細胞系では極めて低い発現であった。FGF2発現が高かった細胞系では,これまでの解析からIFNTの高い発現を確認している。FGF受容体であるFGFR1の発現はこれらFGF2高発現細胞系で高い発現を認めた。しかし,FGFR1の発現量は他のFGFR2およびFGFR3と比較して著しく低値であった。FGFR4の発現はBT-K及び-Lで高発現であり,FGF2発現に呼応していなかった。EGFはBT-A, -C, -Kで発現を認めたが,その発現量は著しく低値であった。HB-EGFは全てのBT細胞系に発現し,その発現量はFGF2に比較して高かった。一方,着床時期胚のマイクロアレイ解析によるFGF2及びEGFの発現量は低く,FGFR2, 3及びEGFRの比較的高発現を認めた。この様に,BT細胞系でのFGF, EGF関連遺伝子の発現動態は,着床期胚栄養膜の発現動態とよく符合していた。これらの結果は,妊娠初期胚のFGF, EGFの動態及び役割をBT細胞系が良く保持しており,胚の着床機能の解析モデルとして有用であることを示唆している。
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© 2011 日本繁殖生物学会
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