日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-9*
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卵・受精
2細胞期胚の核小体に置換したブタ卵母細胞の発生
*京極 博久大串 素雅子宮野 隆
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抄録

【目的】最近の研究から,卵母細胞の核小体は成熟には必要ないが,受精後に形成される前核中の核小体形成とその後の胚発生に必要なことが示された。2細胞期胚の核小体は卵核胞期(GV期)の核小体と同様に緊密な形態をしている。本研究では,ブタ2細胞期胚の核小体が,GV期の卵母細胞の核小体を代替しうるかを核小体を置換することによって調べた。【方法】直径4~5 mmの卵胞からGV期のブタ卵母細胞(直径120 µm)を採取し,実験に用いた。顕微操作によりGV期の卵母細胞と2細胞期胚より核小体を採取した。実験1では,GV期の卵母細胞の核小体を顕微操作により除去(脱核小体)したのち30時間成熟培養した卵母細胞を電気刺激により活性化し単為発生させた。活性化24時間後に得た核小体を持たない2細胞期胚の片側の割球にGV期卵母細胞もしくは2細胞期胚の核小体を顕微注入し,活性化7日後に胚盤胞への発生を観察した。実験2では,脱核小体後30時間成熟培養した第二減数分裂中期(MII)の卵母細胞にGV期卵母細胞もしくは2細胞期胚の核小体を顕微注入した。これらの卵母細胞を電気刺激により活性化し,2日後と7日後にそれぞれ卵割と胚盤胞への発生を観察した。【結果】実験1:2細胞期胚の核内には複数個の核小体が存在したが,遠心分離により核小体は1個に融合し,核小体の採取が可能となった。GV期卵母細胞もしくは2細胞期胚の核小体を注入した2細胞期胚は,ほとんど胚盤胞へ発生しなかった(3~6%)。実験2:活性化2日後の卵割率は全ての実験区で高い値を示した(86~98%)が,7日後,脱核小体卵母細胞は,ほとんど胚盤胞へ発生しなかった(2%)のに対し,脱核小体‐成熟培養したMII卵母細胞に,GV期卵母細胞もしくは2細胞期胚の核小体を顕微注入すると,胚盤胞へと発生した(47%, 50%)。これらの結果から,核小体は1細胞期と2細胞期の間の胚に必須であること,また2細胞期の核小体にはGV期の核小体と同様に発生を支持する機能があることが明らかとなった。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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