日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-10*
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卵・受精
着床前発生過程のブタ単為発生2倍体における糖新生関連酵素の発現
*渋谷 海大李 智博三宅 正史
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抄録

【目的】着床前胚のグルコース(Glu)要求性は種によって異なる。マウス胚において培地へのGlu添加は,初期卵割期胚の発生を抑制するが,胚盤胞形成には必須である。そのためGlu不含培地では,胚盤胞を形成せずに退行する。一方ブタ胚はGluを含まないPZM-3培地において,受精卵,単為発生2倍体ともに,胚盤胞まで高率に発生する。マウス胚とブタ胚における,このようなGlu代謝の違いは,糖新生の有無に起因すると仮定した。つまり,ブタ着床前胚では糖新生が行われているために,培地へのGlu添加を必要としないと考えた。本研究では,着床前のブタ胚が糖新生能力を持つかどうかを明らかにするために,着床前の各発生段階にあるブタ単為発生2倍体において,糖新生の不可逆的反応に関わる酵素[ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ (PEPCK), ピルビン酸カルボキシラーゼ (PC), フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ (FBP), グルコース-6-ホスファターゼ (G6P)]の発現を調べた。【方法】直径4~6 mmの卵胞からGV卵を採取し,44~46時間成熟培養後,MII卵を活性化させ,サイトカラシンB処理によって単為発生2倍体を作出した。2倍体をPZM-3で培養し,活性化後24, 48, 72, 96, 120, 144時間に,それぞれ48~50個の正常胚を回収した。これらの2倍体胚,および50個のMII期卵母細胞からtotal RNAを抽出した。抽出したRNAを元にcDNAを合成し,RT-PCR法を用いて糖新生関連酵素(PEPCK, PC, FBP, G6P)のmRNA発現を調べた。【結果】MII期卵母細胞,ならびに2細胞から拡張胚盤胞期まですべての胚において,PEPCK, PC, FBP, G6PのmRNA発現が認められた。以上の結果から,哺乳動物のMII期卵母細胞,および胚盤胞までのすべての発生段階の活性化2倍体で糖新生を行えることが示唆された。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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