日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-96
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卵巣
黄体周期を通じたウマ黄体における AKR1C23 発現
*香西 圭輔法上 拓生高橋 昌志阪谷 美樹Tomas ACOSTA南保 泰雄奥田 潔
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抄録

【目的】多くの哺乳動物において黄体は妊娠の成立・維持に必須の progesterone (P4) を分泌する。妊娠が不成立の場合,次の発情を回帰するため黄体は退行する。黄体の退行は機能的および構造的退行からなる。構造的退行は黄体細胞のアポトーシスによるものと知られているが,機能的退行機構には不明な点が多く残されている。げっ歯類の不完全性周期において,黄体細胞に P4 を生物活性のない 20α-dihydroprogesterone (20α-OHP) に代謝する酵素である 20α-hydroxysteroid dehydrogenase (20α-HSD) が発現するため,黄体は P4 分泌能を持たないとされている。ウマにおいては,aldo-keto reductase (AKR) superfamily の一つである AKR1C23 が 20α-HSD 活性を有すること,また黄体組織での 20α-OHP の存在が示されている。本研究はウマ黄体の機能的退行機構研究の一環として,黄体組織における AKR1C23 発現を検討した。【材料および方法】ウマの繁殖期である 4-7 月に熊本県の食肉センターより黄体を採取し,肉眼的所見により黄体初期,黄体中期,黄体後期および黄体退行期の 4 ステージに分類し、組織を解析に用いた。実験 1: 黄体周期を通じた組織中 P4 および 20α-OHP 濃度を EIA により測定した。実験 2: 黄体周期を通じた AKR1C23 mRNA 発現を定量的 RT-PCR 法により調べた。【結果】実験 1: 組織中 P4 濃度は黄体中期において最も高く,黄体後期および黄体退行期にかけて有意に減少した。一方,組織中 20α-OHP 濃度は黄体後期において他の周期に比べ有意に高かった。実験 2: AKR1C23 mRNA 発現量は黄体後期において黄体初期に比べ有意に高く,また黄体退行期において黄体初期および黄体中期に比べ有意に高かった。【考察】本研究において,黄体後期に組織中 P4 濃度の減少および 20α-OHP 濃度の増加,ならびに AKR1C23 mRNA 発現の増加が見られたことから,ウマ黄体の機能的退行には AKR1C23 による P4 の 20α-OHP への代謝が関与していると示唆された。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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