日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-22
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性周期・妊娠
ウシ子宮内膜線維芽細胞および栄養膜細胞の遺伝子発現に及ぼすIFNTの影響
*茂野 智子高橋 透木崎 景一郎橋爪 一善
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抄録

【目的】妊娠初期の反芻動物では,胚の栄養膜細胞により妊娠特異的I型インターフェロン(IFN)であるIFN-τ(IFNT)の分泌の上昇がおこる。IFNTは,妊娠認識シグナルとして子宮内膜に作用して黄体機能の維持に働くと同時に,免疫細胞の遺伝子発現を変化させると考えられている。妊娠初期に子宮内膜および末梢血白血球においてI型IFN応答性遺伝子であるISG15,MX1,MX2,OAS1などの発現が上昇する。本研究では,ウシ子宮内膜および栄養膜細胞に及ぼすIFNTの作用機序を明らかにするため,培養細胞にIFNTを添加した時の遺伝子発現動態を検討した。【方法】ウシ子宮内膜線維芽細胞および栄養膜細胞(BT-1細胞)を用い,IFNTを0 (対照培養液),0.1あるいは1 µg/ml添加し,添加0時間(添加前),2時間,24時間に細胞を回収した。回収した細胞から総RNAを抽出し,リアルタイムRT-PCR法により各細胞におけるmRNAの発現量を比較,検討した。【結果】子宮内膜線維芽細胞では,添加後2時間および24時間において,ISG15,MX1,MX2,OAS1の発現上昇を認めた。対照群に比較して1 µg/ml添加群では添加後2時間および24時間において発現量が有意に上昇した。一方,BT-1細胞では,IFNTの有無に関わらず添加後24時間で,ISG15,MX1,OAS1の発現上昇を認めた。IFNT添加前,ISG15,MX1,OAS1の発現量は,子宮内膜線維芽細胞よりもBT-1細胞において高く,MX2はどちらの細胞にも発現を認めなかった。また,先に末梢血白血球で妊娠に伴い上昇したCXCL6など数種類の遺伝子発現を検証したが,いずれの遺伝子も子宮内膜線維芽細胞並びにBT-1細胞へのIFNT添加に伴い上昇した遺伝子は無かった。これらのことから,ウシ子宮内膜線維芽細胞はIFNTに反応してI型 IFN 関連遺伝子群の誘導,発現上昇をすること,栄養膜細胞系には,そのような反応系は存在しないことが示唆された。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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