日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-27
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性周期・妊娠
ウシ卵管における一酸化窒素産生の局所的調節機構
*小林 芳彦奥田 潔
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抄録

【目的】卵管は配偶子および初期胚の移送に重要な役割を持つ。配偶子ならびに初期胚の移送には,卵管上皮の繊毛運動および卵管平滑筋の収縮弛緩運動が関与している。卵管平滑筋の運動は prostaglandin E2 (PGE),PGF2α (PGF),endothelin,oxytocin ならびに 一酸化窒素 (NO) などにより調節されている。このうち PGE はマウス大動脈内皮,PGF はウシ黄体由来血管内皮において,それぞれ NO 産生を刺激することが報告されている。そのため卵管の NO 産生にも PGE および PGF が何らかの影響を及ぼすことで平滑筋運動が調節される可能性が考えられるが,詳細は明らかでない。本研究は卵管平滑筋運動の調節機構を明らかにする目的で実施された。【方法】1) 卵巣の肉眼的所見により,排卵後の日数から 5 周期 (黄体初期: 2-3 日,形成期: 5-6 日,中期: 8-12 日,後期: 15-17 日および卵胞期: 19-21 日) に分類し,各期の卵管組織を 4 時間培養した後,培養上清中の PGE および PGF 濃度を EIA により測定した。2) 排卵後 0-3 日目のウシ卵管膨大部および峡部から上皮細胞および間質細胞を単離し,コンフルエントに達した後 PGE (0.01, 0.1, 1 μM) および PGF (0.01, 0.1, 1 μM) を添加し,24 時間培養後の誘導型 NO 合成酵素 (iNOS) mRNA 発現を定量的 RT-PCR 法により検討した。【結果】1) PGE 産生は膨大部において他の周期と比較し黄体初期に高かった。峡部においては黄体初期および形成期に高く,中期に低かった。PGF 産生は膨大部において他の周期と比較し黄体初期に高かった。峡部においては黄体初期および中期に高く,卵胞期に低かった。2) 膨大部上皮および間質細胞において,PGE および PGF は iNOS mRNA 発現を低下させたが、峡部上皮および間質細胞の iNOS mRNA 発現は PGs の影響を受けなかった。以上より,排卵後の卵管において多く産生される PGs が,膨大部上皮および間質細胞の iNOS を介した NO 産生を抑制することで,卵子および初期胚の移送のための平滑筋運動を促進している可能性が示された。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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