日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: AW-2
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卵巣
ウシ黄体における galectin-3 の β1 integrin を介した黄体退行機構の解明
*羽柴 一久佐野 栄宏奥田 潔
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抄録

【目的】Galectin-3 (Gal-3)はβ1 integrin (ITGB1)の糖鎖と結合し細胞のアポトーシスを調節することが知られている。我々は,ウシ退行黄体の黄体細胞においてGal-3が高発現し細胞膜に局在すること,Gal-3は黄体細胞のアポトーシスを誘導することを明らかにした。しかし,ウシ黄体細胞におけるGal-3発現及び分泌調節因子,Gal-3のターゲットタンパク質について詳細は明らかではない。本研究では,ウシ黄体における Gal-3の役割を解明するために,Gal-3の発現及び分泌調節因子,発情周期を通じたITGB1の発現変化,その糖鎖構造について検討した。【方法】1) ウシ中期黄体から単離した黄体細胞に腫瘍壊死因子(TNF: 2.9 μM),interferon γ(IFNG: 2.5 μM),prostaglandin F2α(PGF: 1.0 μM)を単独または組み合わせて添加し12,24,48,72時間後のGal-3 mRNAとタンパク質発現を調べた。また,中期黄体を有するウシにPGFを投与し0.5,24時間後の黄体組織におけるGal-3タンパク質発現を調べた。2) 黄体細胞にPGF,lactose (20 μM),またはsucrose (20 μM)を単独または組み合わせて添加し48時間後のGal-3タンパク質発現を調べた。3) 発情周期を通じた黄体組織におけるITGB1 mRNAとタンパク質発現,その糖鎖構造を調べた。【結果】1) Gal-3 mRNA とタンパク質の発現量は48時間において,controlと比較してPGF添加において有意に増加した。また,全ての時間においてGal-3 mRNA発現量はcontrolと比較してTNFおよびIFNG単独または組み合わせ添加において変化はなかった。PGF投与24時間後のGal-3タンパク質発現は増加した。2) PGF添加と比較してPGF及びlactose組み合わせ添加においてGal-3タンパク質発現は低下した。3) 発情周期を通じてITGB1 mRNAとタンパク質発現量に変化はなくITGB1はGal-3結合性の糖鎖を有していた。以上より,黄体細胞においてPGFによりGal-3発現および細胞外への分泌が促進され,Gal-3はITGB1を介して黄体細胞の細胞死を調節する可能性が示された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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