日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: AW-5
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生殖工学
マウス体細胞核移植胚の移植前選別の試み
*大畠 一輝加藤 容子
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抄録

【目的】マウス体細胞核移植胚の発生能は,体内受精卵などと比較すると著しく低い。クローン効率を向上させるには,初期発生中に,満期まで正常に発生する胚を選別する方法が有効だと考えられる。そこで我々は初期胚での遺伝子発現に着目し,体細胞核移植胚から効率よく胎子を得ることができるような新たな移植前選別法の確立を試みた。本実験では一卵性双子胚(以下,双子胚)を用い,胚盤胞期において双子胚の内一方の胚盤胞を遺伝子解析し,その結果に基づいてもう一方の胚盤胞を移植する方法を試みた。解析した遺伝子は,マウス胚の胚盤胞で高発現し後期発生に重要であるOct4,Sox2であり,選別の指標とした。【方法】過剰排卵を誘起させたBDF1雌マウスより得られたMII期卵をレシピエント卵,卵丘細胞をドナー細胞として核移植を行った。核移植後の活性化処理は100 nMTSA,5 μM LatA,10 mM SrCl2を含むカルシウム欠損KSOM培地で6時間培養することにより行った。2細胞期まで発生した核移植胚は,ピエゾドライブを用いて透明帯を除去し,ピペッティングをすることで双子胚を作出した。培養は,well-in-drop法で行い1ドロップに双子胚5ペア培養し,同一ドロップ内で体内受精卵を5個共培養した。両方が胚盤胞まで発生した双子胚に関しては,その内1つをリアルタイムPCRにより遺伝子解析し,もう一方を体内受精卵と共に単一胚移植した。【結果】双子胚が両方とも胚盤胞まで発生した割合は23%であった。そのような双子胚の片方の胚についてリアルタイムPCRによる遺伝子発現解析を行った。体内受精卵と双子胚の遺伝子発現レベルの比が5倍以内のものを正常胚とし,そのような胚は24%存在した。しかし,それとペアとなる胚を単一胚移植してもそのような胚からは生存胎子を得ることはできなかった。また妊娠中期においても生存胎子は確認できなかった。本実験では,遺伝子の発現レベルを指標とした核移植胚の選別を行ったが,核移植効率の改善には至らなかった。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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