日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-10
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卵・受精
ブタの体外受精時に透明帯はIzumoの発現を促進し卵母細胞への精子侵入を高める
*谷原 史倫中井 美智子NGUYEN Thi Men加藤 徳子野口 純子金子 浩之菊地 和弘
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抄録

【目的】ブタ卵母細胞(以下,卵)の体外受精(IVF)時において,卵への精子侵入に関する透明帯(ZP)の機能については不明な点が多い。我々はこれまでに,体外成熟培養後,ZPを有する成熟卵(ZP+卵)と,ZP+卵からZPを除去したZP-卵との精子侵入状況の比較により,IVF時にZPが存在すると卵への精子侵入は促進され,ZPを通過した精子は全て先体を失い,効率よく卵細胞膜と融合することを示した(本学会第104,105回大会)。Izumoはマウス,ヒトおよびブタ精子において精子-卵子融合因子として報告されている。本研究ではブタのIVF時におけるZPの存在がIzumoの発現と卵への精子侵入に及ぼす影響を検討した。【方法】ZP-卵に対し抗Izumo抗体(0(対照区),0.25ならびに0.5 μg/ml)を添加した体外受精培地と凍結融解精巣上体精子を用いてIVFを行い,開始後10時間での精子侵入状況を調べた。また,IVF開始後1,3および5時間での卵表面に付着した精子数を測定することでBinding Assayを行った。媒精時間は3時間,精子濃度は1×104 sperm/mlとした。次にZP+卵とZP-卵を用いてIVFを行い,開始後3時間でFITC-PNA染色,Hoechst染色および免疫蛍光染色を行い,ZP+卵においてはZP内部もしくは囲卵腔に存在しかつ先体を失った精子について,ZP-卵においては卵細胞膜へ付着しかつ先体を失った精子についてIzumoの発現状況を調べた。【結果】ZP-卵において抗体濃度を高くすると精子侵入率ならびに侵入精子数は減少し,0.5 μg/ml添加区では対照区と比較し有意に低かった(90.4%ならびに2.1個 vs 68.6%ならびに1.6個)(P<0.01,ANOVA/Tukey検定による)が,卵表面に付着した精子数に差は無かった。ZP内部もしくは囲卵腔に存在する精子はすべて先体を失い,ZP-卵に付着した先体を失った精子と比較してIzumoの発現率は有意に高かった(64.6% vs 5.2%)(P<0.01,カイ二乗検定による)。【結論】精子がZPを通過することでIzumoの発現が促進されることが明らかとなった。それにより,精子と卵の膜融合が促され,卵への精子侵入が高まることが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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