日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-9
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卵・受精
マウス卵成熟過程におけるPTENの発現動態と阻害剤の影響
*羽賀 萌実名取 友来名古 満木村 直子
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抄録

【目的】タンパク質チロシンホスファターゼであるPhosphatase and tensin homolog deleted from Chromosome 10(PTEN)は,ホスファチジルイノシトール3リン酸を脱リン酸化することで,PDK1やAktの活性化を抑制している。新生仔マウス卵巣をPTEN阻害剤とPI3K活性化ペプチドに暴露した場合,原始卵胞発育が促され,成熟卵が得られることが報告されている( Li et al., PNAS, 2010)。本研究では,卵成熟過程における直接的なPTEN不活化の影響を調べるため,PTENタンパク質の発現動態を明らかにし,成熟培地へのPTEN阻害剤添加の影響を調べた。【方法】過排卵処理したICR系野生型マウスから卵核胞(GV)期卵を採取し,20%O2下で18時間培養(IVM)し,経時的に回収した卵を用いてPTENあるいはpPTEN抗体による蛍光免疫染色,ウエスタンブロット解析を行った。また,IVM培地へ0.1~10 μMのPTEN阻害剤bpV(HOpic)を添加し,IVM 10時間まで2時間毎の核相を観察した。さらにこれらの卵を体外受精させ,胚発生能を調べた。【結果】PTENおよびpPTENの局在は,全ステージで細胞質全体にみられ,特に卵核胞崩壊期(GVBD)と第一減数分裂前中期では染色体付近,第一および第二減数分裂中期(MI,MII期)ではPTENは紡錘体上に,pPTENは紡錘体極付近にみられた。pPTENタンパク質発現量は,IVM 4~8時間で高くなり,IVM 18時間で著しく減少した。PTEN阻害剤の添加培養では,1.0 μMと10 μM区でGVBDとMI期の早期化がみられ,MII期への到達は1.0 μM区で最も早かった。胚発生能は1.0 μM区で高い傾向があった。以上の結果から,マウスIVM系卵におけるPTENの不活化は,卵成熟の進行を早め,受精後の胚発生能に影響を与える可能性が考えられた。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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