日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-13
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卵・受精
マウス初期胚におけるRNAウイルスレセプターRIG-Iを介した抗ウイルス応答
*佐々木 恵亮高橋 昌志川原 学
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抄録

【目的】脊椎動物はウイルスに対して複雑な自然免疫機構を保持する。免疫細胞においてはウイルスレセプターが種々の病原体構成分子を認識し,インターフェロンや炎症性サイトカインによる炎症反応を引き起こす。しかしながら,哺乳動物の初期胚における抗ウイルス応答機構は不明である。本研究では,マウス初期胚における抗ウイルス応答の有無を検証することを目的とし,RNAウイルス感染を認識するレセプターRetinoic acid-inducible gene-I(RIG-I)を介する抗ウイルス応答を解析した。【方法】過剰排卵を誘起したC57BL/6N系統の雌マウスの卵管膨大部より卵丘細胞卵子複合体を回収し,体外受精および体外培養に供した。得られたMII期卵母細胞,1細胞期胚,2細胞期胚,4細胞期胚,8細胞期胚,桑実胚および胚盤胞期胚について,qRT-PCRおよび免疫染色法によりRIG-Iの発現を検出した。採取したMII期卵母細胞にGFP発現組換え水疱性口内炎ウイルス(VSV)を感染させ,体外受精および体外培養に供した。VSV感染胚は1細胞期および2細胞期の時点で回収し,qRT-PCRによりRIG-Iおよび炎症性サイトカインであるInterleukin 1β(IL1B)の発現レベルを調べた。【結果】qRT-PCRおよび免疫染色法の結果,MII期卵母細胞から胚盤胞期胚においてRIG-Iの発現が確認され,とくに2細胞期胚までに強い発現が認められた。MII期卵母細胞へのVSV感染の結果,感染胚の胚盤胞期胚までの発生率は有意に低下した(P<0.05)。VSV感染によりRIG-Iの発現レベルは一過性に増加したが,IL1Bは感染の有無に関わらず検出限界以下であった。以上のことから,VSV感染胚においてRIG-I発現は上昇するものの,炎症反応による抗ウイルス応答は示さないと考えられた。現在,感染による他のサイトカイン類への影響,さらにRIG-IのリガンドであるPoly(I:C)のマイクロインジェクションによる解析を進めている。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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