日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-20
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性周期・妊娠
着床期ラット子宮内膜の遺伝子発現における胚の影響
*山上 一樹山内 啓介山下 聖世山内 伸彦服部 眞彰
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抄録

【目的】子宮内膜は卵巣ステロイドホルモンや胚との相互作用により,胚に対する受容能を獲得する。これまで,KOマウスの作出などにより,子宮内膜で発現する着床関連因子が多く報告されている。一方,子宮内膜受容能に対する胚の機能に関しては未だ不明な点が多く残されている。これに対し,ヒトの受精卵やIVF胚の培養上清を用いた解析により,子宮内膜においてHoxa10やTGFb1など複数の遺伝子の発現が変化することが報告された(Sakkas et al., 2003, Cuman et al., 2013)。これらの報告は胚の産生した因子が子宮内膜受容能を制御する可能性を示唆している。しかしながら,着床期子宮内膜において胚由来シグナルに応答する因子は未だ明確には同定されていない。本研究は,着床遅延モデルおよび人為的脱落膜化モデルを用い,着床期ラット子宮において胚の存在に依存して発現が変化する遺伝子の検索を目的とした。【方法】妊娠3.5日目Wistarラットの卵巣を除去し,Progesterone(P4:10mg/kg)を5日間皮下注射することで,着床遅延モデル(DI区)を作製した。胚の非存在下の条件として,偽妊娠ラット3.5日目に同様の処置を施した子宮(PP区)を対照区とした。P4処理後,子宮のmRNAを抽出し,候補因子としてStc1,Bmp7,Tgfb1,Ifi27,rISP2b,Hoxa10,Wnt7b,Calcitoninの遺伝子発現をreal time qPCR法により解析した。また,妊娠5.5日目と人為的脱落膜化モデル(AD区)を比較し,着床後の胚の有無におけるこれらの遺伝子発現を解析した。【結果】PP区と比較して,DI区においてBmp7とHoxa10の発現が有意に高い値を示した(P<0.05)。一方,これら二つの遺伝子の発現は,どちらも妊娠5.5日目とAD区との間に差は認められなかった。これらの結果から,子宮内膜におけるBmp7とHoxa10の発現が着床前の胚の存在に依存することが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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