日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-27
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生殖工学
ICSIおよびIVF直後の卵子における精子ミトコンドリア活性が初期発生に及ぼす影響
*緒方 和子加藤 翼山本 はるかボラジギン サラントラガ山口 美緒長尾 慶和
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抄録

【目的】体内における通常の受精あるいはIVFにおいて,精子は受精能獲得や先体反応を経た後に受精に至るのに対し,ICSIにおいては,人為的に選択された精子が卵子内に直接注入される。本研究では,IVFとICSIにおける受精過程の違いのひとつとして,卵子侵入または注入直後の精子ミトコンドリア(MT)活性に着目し,卵子内で精子MTが産生する活性酸素種(ROS)がその後の初期発生に及ぼす影響について検討した。【材料と方法】ウシ屠体卵巣由来のCOCを成熟培養後,IVFおよびICSIに用いた。精子は凍結融解精子を用い,蛍光MTプローブであるJC1を添加したBO液中で培養した後に,IVFおよびICSIに供試した。直進運動を行い尾部のみを振幅させている精子を通常運動精子,頭部と尾部を激しく対称振幅させながら直進運動を行う精子を活性化運動精子とした。[実験1]IVF胚と様々な状態の精子を注入して得られたICSI胚の初期発生能と染色体正常性について検討した。[実験2]通常運動精子および活性化運動精子の産生するROS量を測定した。[実験3]IVF卵子と活性化運動精子を注入したICSI卵子の精子MT活性を比較するために,精子侵入または注入0,3および4時間後の卵子中の精子MT膜電位を,JC1蛍光強度のレシオメトリック法により解析した。【結果】[実験1]活性化運動精子ICSI胚の胚盤胞期の染色体正常性は,IVF胚,通常運動精子ICSI胚およびMT活性抑制活性化運動精子ICSI胚に比べ低かった(P<0.05)。[実験2]活性化運動精子の産生するROS量は通常運動精子に比べ高かった(P<0.05)。[実験3]精子注入0時間後のICSI卵子における精子MT相対膜電位は,精子侵入0時間後のIVF卵子に比較して高かった(P<0.05)。【考察】IVFにおいては,精子MT活性は卵子侵入後に速やかに低下するが,ICSIにおいては高い状態が維持され,その間に卵子内で産生されるROSが初期発生時の染色体異常を誘発する可能性が示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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