日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-29
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生殖工学
マウス体外培養遅延着床胚盤胞の産仔への発生に及ぼす非必須アミノ酸とスレオニンの効果
*後藤 奈々向井 利太高口 尚也田島 陽介今井 裕山田 雅保
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抄録

【目的】マウス胚盤胞(受精後5日目,day 5)を脱イオン化BSA(dBSA,0.6%)添加KSOM培地(dBSA培地)で培養すると,胚は遅延着床胚盤胞(DB胚)として少なくともday 9まで生存し,その産仔への発生能はday7まで非常に低いが保持され(産仔率12.5%)day 9では喪失すること,そしてday 9まで内部細胞塊(ICM)細胞数が減少することを我々は示している。本研究では長期培養マウスDB胚の産仔率の向上を目指し,マウス体外培養DB胚の産仔への発生に及ぼす非必須アミノ酸(NEAA)とES細胞の自己増殖に必須であるスレオニン(Thr)の効果を検討した。【方法】ICR系マウス胚盤胞(day 5)をNEAA及びThr(10mM)添加(実験区)あるいは無添加(対照区)dBSA培地でday 9まで培養し,DB胚の細胞数の測定及び胚移植による産仔への発生を検討した。またDB胚の発生におけるThr脱水素酵素(TDH)によるThr代謝の関与について,免疫蛍光染色によるTDHの発現,そしてThr類似体である3-Hydroxynorvaline (3-HNV,30 µM)のDB胚の発生に及ぼす影響を検討した。【結果】実験区のday9 DB胚のICM細胞数は,対照区のday 9 DB胚に比べ有意に高く(P<0.05),またday 5胚盤胞に匹敵した。実験区のday7 DB胚の産仔率(43.2%)は,対照区day 7 DB胚(12.5%)およびday5胚盤胞(28.8%)に比べ有意に高い値となり(P<0.05),さらに実験区のday 9 DB胚からも低率(2.4%)ではあるが産仔を得ることができた。TDHはDB胚のICMに局在することが観察され,またDB胚は3-HNVによって退行変性したが,3-HNVと同時にThr (10mM)処理することによってDB胚はday9まで生存した。以上の結果から,NEAA及びThrがマウス体外培養DB胚の生存及び産仔発生能の向上・維持に寄与することが明らかとなった。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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