日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-32
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生殖工学
予め染色体分析された一組の配偶子からの受精卵作出とその発生能
*渡部 浩之立野 裕幸
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抄録

【目的】生殖補助技術を伴う不妊治療では染色体異常が高い頻度で発生し,流産を引き起こす原因の一つとなっている。染色体異常を有する胚の選別には,胚移植前の分割卵から割球を単離し,遺伝学的診断を施す着床前診断が有効であるが,胚を操作するという点で侵襲的な方法である。この点を解決するために,これまで我々は早期染色体凝集(PCC)による染色体分析を利用した精子の受精前遺伝学的診断法や,Calyculin A(Caly A)を用いた薬剤誘導PCCによる迅速・簡便な染色体分析法を確立してきた。これらの方法をさらに改良し,受精前に遺伝的診断を施した一組の精子・卵子から受精卵を作出する「配偶子の受精前遺伝学的診断法」の確立を試みた。【方法】未受精卵を有核細胞片と無核細胞片に二等分した。有核細胞片は賦活化により,無核細胞片は顕微授精により,それぞれ単為発生卵・雄性発生卵を作出し,2細胞期まで発生させた。それぞれの割球を単離後,単為発生卵と雄性発生卵の割球を不活化センダイウイルスにより融合させ,二倍体の受精卵を作出した。受精卵を受容雌に移植し16日目の着床および胎仔発生を調査した。また,残された単為発生卵・雄性発生卵はCaly Aを用いた薬剤誘導PCCによる染色体分析に供試した。【結果】単為発生卵と雄性発生卵の割球を融合させたところ,98.1%が正常に融合し,二倍体の受精卵が作出できた。割球融合後24時間までに74.5%が分割し,割球融合後72時間までに50.3%が胚盤胞へ発育した。受容雌に移植後,これらの胚は正常に胎仔まで発育した。また,残された割球はCaly A誘導PCCにより染色体分析を行うことができた。以上の結果から,予め染色体分析を行った一組の精子・卵子から受精卵を作出する「配偶子の受精前遺伝学的診断法」の確立に成功した。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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