日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-31
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生殖工学
ブタ未受精卵の体外加齢抑制法の最適化
*谷 哲弥加藤 容子
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抄録

【目的】排卵された未受精卵は,第二減数分裂中期で細胞周期を停止しており数時間以内に受精することで発生を開始する。体外受精や体細胞クローンなどの発生工学研究において,排卵直後の状態の未受精卵を用いることが一般的であり,体外及び体内での未受精卵の加齢は,卵細胞質の機能変化やその後の胚発生を大きく阻害することが知られている。特にブタ体細胞クローン研究では,胚移植に多数のクローン胚を準備する必要があるが一回の実験で操作できる未受精卵数は限られてくる。我々は,体外成熟したブタ未受精卵の単為発生及びクローン胚の体外発生率を落とすことなく24時間保存できることを報告した(第105回大会)。本研究では,このブタ未受精卵の体外加齢の抑制法の最適化をはかり,さらに卵細胞質の機能特性を明らかにすることを目的として実施した。【方法】成熟ブタ未受精卵は屠畜由来卵巣より採取し,44時間体外成熟したものを用いた。未受精卵の保存法の最適化は,培地(NCSU37,TCM199,PZM5,KSOM)・気相・温度・添加物(PVP,血清アルブミン,血清,ブタ卵胞液,ビタミンB,ビタミンC,メラトニン,メルカプトルエタノール,ピルビン酸,カフェイン,MG132)についてそれぞれ24時間後の保存後の単為発生の発生率と胚盤胞の細胞数を指標に検討した。また,至適条件で保存した未受精卵を用いて体細胞核移植も実施した。加齢未受精卵は,MPF,MAPK,クロマチンのアセチル化などの特性も調べた。【結果】保存に用いる培地の条件は,PZM5,5%酸素,39度,血清アルブミン及び血清添加で新鮮卵と同等の単為発生の発生率を示した。さらにピルビン酸及びメラトニンを添加することで,胚盤胞の細胞数の有意な増加も確認できたことから,ブタ未受精卵の体外加齢抑制法に有効であることが明らかになった。さらに至適条件で保存した加齢抑制卵を用いても体細胞核移植胚の体外発生能は新鮮卵と同等であった。また,加齢抑制卵のMPFとMAPK活性は有意に低下しなかったがクロマチンは高頻度にアセチル化されていた。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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