日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-35
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生殖工学
Hsp-Sry Tg マウスを用いた精巣決定遺伝子SRYの標的遺伝子の同定
*三浦 健人張替 香生子篠村 麻衣中口 真有冨田 絢子恒川 直樹鈴木 仁美金井 正美九郎丸 正道金井 克晃
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抄録

【目的】哺乳類では,Y染色体上の性決定遺伝子Sryにより標的遺伝子Sox9の発現が誘導され,性的に未分化な生殖腺が精巣へと分化する。しかし,Sox9以外のSry標的遺伝子やその下流の分子機構の多くは未解明である。当研究室で作出したトランスジェニックマウスHsp-Sry Tgは,熱処理により生殖腺に一過的なSRY発現を誘導出来る。Hsp-Sry TgではXX生殖腺にもSryを発現させ,SOX9発現も誘導できるが,生殖腺の卵巣分化に伴い胎齢13.5日(E13.5) までにSRY依存的なSOX9誘導能(SDSI) は失われる。しかし,E13.5XX生殖腺を生体雄マウス腎臓被膜下に移植し発生させると,移植10日目にはSDSIが再獲得され,20目には精巣様の構造が出現する(XX精巣化モデル)。本研究は, XX精巣化モデルとHsp-Sry Tgを用いた,XX生殖腺の精巣化過程における遺伝子変動の網羅的かつ継時的な解析と,新規SRY標的遺伝子の同定を目的とする。【方法】E13.5野生型XX生殖腺を雄マウスに移植後,0~20日目で継時的に採材し(A),マイクロアレイにてXX精巣化における遺伝子の発現変動を解析した。また,Hsp-Sry Tg XX生殖腺を同様に移植後,10日目にSRYを誘導し(B),SRY依存的に発現が上昇する遺伝子群の同定を行った。【結果】Aの解析では,XX精巣化の過程で,XX生殖腺に特異的な遺伝子の発現が減少し,XY生殖腺に特異的な遺伝子の発現が増加していく結果が得られた。この結果から,SDSI消失に関与する卵巣化因子の減少に伴って,SDSIの再獲得が起こることが示唆された。また,Bの解析では,SRYの誘導により約4000の遺伝子が上昇しており,この遺伝子群中にはSrySox9Fgf9といった既知の精巣化因子の他,75個のXY生殖腺に特異的な遺伝子が含まれていた。今後,これらの因子について解析を進めることで,SRYが直接制御する生殖腺の性決定分子機構の解明に寄与できると考える。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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