抄録
【目的】近年細胞レベルでの代謝・分解メカニズムとしてオートファジーが注目されている。細胞におけるオートファジーの機能は多岐にわたり,栄養源の確保や増殖・分化,細胞死などに関与していることが報告されてきた。卵巣の顆粒層細胞においても存在が確認されているが生理的機能には不明な点が多い。今回,顆粒層細胞におけるオートファジー分子機構の解析のためのツールとしてオートファゴソームマーカーを安定発現する細胞株を作製し,その有用性と特性について評価を行った。【方法】ヒト顆粒層細胞由来KGN細胞のcDNAを用いてヒトLC3B遺伝子のクローニングを行ってAcGFP融合タンパク質発現用ベクターに組み込んだ。次にこのベクターをKGN細胞へトランスフェクションし,G418による薬剤選択を行って顆粒層細胞由来安定発現株(GFP-LC3・KGN細胞)を得た。得られた細胞を用いて栄養飢餓,mTOR阻害剤ラパマイシン,ゴナドトロピンなどによるオートファゴソーム形成を観察し,特性を明らかとした。【結果】GFP-LC3・KGN細胞において,栄養飢餓やmTOR阻害剤添加によってオートファゴソームの形成が促進された。またRNA干渉によりオートファジー関連因子であるAtg5をノックダウンすることでこの効果が抑制された。さらにhCGやPKA阻害剤によるオートファジーの促進が観察された。これらの結果から,安定発現株はオートファジーの解析に有用であること,そしてゴナドトロピンとその下流のシグナルにより顆粒層細胞のオートファジーが調節されている可能性が示された。