日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-25
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臨床・応用技術
ウシGV期卵母細胞のガラス化保存における卵丘細胞除去および細胞骨格安定剤Taxolの影響
*佐藤 隆司阿部 靖之
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抄録

【目的】演者らは,ウシ卵核胞(GV)期卵母細胞のガラス化法を開発してきたが,依然として受精後の発生能が低い。そこで,卵丘細胞除去(裸化)による凍結保護剤の浸透性の向上,および裸化による物理障害軽減のため,細胞骨格安定剤Taxol処理によってガラス化法の更なる改良を試みた。【方法】裸化による凍結保護剤の浸透性の変化を調べるため,ウシ卵巣より採取した卵丘-卵母細胞複合体(GV-COCs),および卵丘細胞をピペッティングにより一部または完全に除去した卵母細胞を,40%エチレングリコールおよび18%フィコール-70,0.3 Mスクロース添加PB1(EFS40)に暴露し,浸透圧による収縮から再拡張までに要した時間を計測した。また,裸化およびTaxol処理が卵母細胞の受精能および発生能に与える影響を調べた。採取後のGV-COCsは,対照区および裸化区,裸化-Taxol区の3区に分け,各処理後にガラス化保存し,体外成熟・受精・発生を行った。Taxol処理は1.0 µg/ml Taxol溶液中で1時間培養した。ガラス化保存は,卵母細胞をEFS10,20,40にそれぞれ5分,4分,1分間暴露後,液体窒素に投入した。【結果】再拡張時間を計測した結果,GV-COCsは23分00秒だったのに対し,一部および完全裸化卵はそれぞれ16分14秒および15分28秒と短縮され,裸化によって凍結保護剤の浸透性を向上できることが示唆された。加えて,一部および完全裸化卵は同程度だったことから,以下の実験は一部裸化卵を用いた。体外受精率は,対照区および裸化区,裸化-Taxol区でそれぞれ21.6%および 40.0%,13.2%と裸化区が最も高く,胚盤胞は裸化区でのみ得られた(2.2%)。 加えて,Taxol単独処理では受精率および胚盤胞率が65.4%および3.8%だったことから,ウシGV期卵母細胞のガラス化保存において,裸化およびTaxolは単独処理で受精能および発生能を向上し得るが,複合処理ではマイナスに作用することが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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