日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-7
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精巣・精子
能動免疫処理によるリラキシン関連因子(RLF)の中和化がブタの造精機能に及ぼす影響
*皆川 至佐方 醍柴田 昌利高坂 哲也
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抄録

【目的】リラキシン関連因子(RLF)はinsulin-like peptide 3 (INSL3)とも呼ばれ,ブタ精巣で発見されたrelaxin/insulin gene familyの一つで,受容体LGR8を介して作用するが,成体での役割はよくわかっていない。これまでに我々はブタ精巣よりnative RLFの単離と構造決定に加え,RLFは性成熟に伴い発現・分泌が増加し,血中のほか精細管内に輸送され,生殖細胞で発現する受容体に結合し,生殖細胞のパラクリン因子として機能することを明らかにしてきた。しかし,生殖細胞でどのような機能を発揮するのか不明であった。本研究では,RLFの能動免疫処理を施して内因性RLFの中和化を図り,ブタ造精機能に及ぼす影響を調べた。【方法】供試動物にはDuroc種の雄豚6頭を用いた。免疫区(3頭)にはN末端に卵白アルブミン(OVA)を結合させたヤギRLF-B鎖ペプチドを,一方,対象区(3頭)にはOVAを投与した。初回免疫は生後7週齢に開始し,24週齢まで追加免疫を行った。抗体価はRLFの結合率として表した。また,精液採取は24~28週齢に行い,精液性状を調べた。さらに,28週齢で精巣を摘出してTUNEL法によるアポトーシス検出とCASP3およびXIAPの遺伝子発現をqPCRで調べた。【結果】抗体価は生後18週齢で最大値を示し,その後は恒常値を保っていた。次に,精液性状を調べた結果,免疫区では正常精子率が低く,死滅精子率と未成熟精子率が高かった。一方,精液量と精子活力には差を認めなかったが,精子濃度は免疫区で有意に低下していた。免疫区の精巣では,精細管にダメージが見られ,TUNEL法により生殖細胞のアポトーシスの頻度が約4倍上昇していることがわかった。さらに,Casp3の遺伝子発現が有意に増加し,XIAPは減少していた。【結論】RLFの中和化は生殖細胞のアポトーシスを増加させ,精子濃度の減少をもたらすことがわかり,RLFは精子形成の維持に関与していることが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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