日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-103
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生殖工学
トランスポゾンPiggyBacシステムによる複数遺伝子のブタ細胞への同時導入
*郡山 実優稲田 絵美齋藤 一誠三浦 浩美大塚 正人中村 伸吾桜井 敬之渡部 聡三好 和睦佐藤 正宏
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抄録
[目的]一個の細胞に複数個の遺伝子を導入することは,それに由来するクローン家畜の改良,生物学の基礎原理を解明する上で重要な手法である。特に,ブタゲノムへの複数遺伝子の導入は,異種移植用のブタを開発する上で重要である。しかしながら,プラスミドDNAの遺伝子導入に基づく現行法では,この課題を解消することは非常に難しい。トランスポゾンPiggyBacシステムは,マウスやヒトの細胞で一回の遺伝子導入で複数遺伝子をそのゲノムに挿入することが知られている。しかし,このようなシステムをブタ細胞に適用した例はこれまで報告されていない。今回,Clawn系ミニブタ由来繊維芽細胞(PEFs)に7個の遺伝子構築体を同時に導入することを試みた。[方法]PEFs (2 × 105個) に5種の薬剤耐性遺伝子を含むトランスポゾンベクターと2種の蛍光遺伝子を含むトランスポゾンベクターとをPiggyBacトランスポザーゼ(transposase)発現ベクターと共にLonza社の電気穿孔に基づく遺伝子導入システムを用いて遺伝子導入した(実験区)。上記成分からトランスポザーゼ発現ベクターを除いたものを対照区とした。[結果]導入後1日目で,細胞の蛍光を観察した結果,両者での遺伝子導入効率の差はなかった。しかし,その後の複数の薬剤による選別では,実験区では幾つかの生存コロニーを確認したが,対照区では皆無であった。生存コロニーから得たゲノムDNAのPCR解析では,90%ほどのコロニーで導入に用いた7個の遺伝子構築体の存在を確認した。また,当該細胞では赤,緑蛍光の同時発現が認められた。この複数個の遺伝子を内包する細胞は選択用薬剤非存在下で3ヶ月培養しても薬剤耐性の性質は変わらなかった。[結論]以上の結果は,トランスポゾンPiggyBacシステムはブタ細胞への複数個遺伝子の同時導入に有効であることを示す。このシステムと核移植を用いれば,複数個の遺伝子をもつクローンブタの開発が加速するものと期待される。
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© 2013 日本繁殖生物学会
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