日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-104
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生殖工学
細胞周期可視化蛍光プローブFucciを発現するブタ体細胞核移植胚の作出
*林田 豪太渡邊 將人松成 ひとみ中野 和明金井 貴博小林 美里奈松村 幸奈倉本 桃子坂井 理恵子浅野 吉則内倉 鮎子前原 美樹新井 良和梅山 一大長屋 昌樹阪上-沢野 朝子宮脇 敦史長嶋 比呂志
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抄録

【目的】細胞周期可視化蛍光プローブFucci (Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator)の開発により(Sakaue-Sawano et al.,2008),発生や再生における形態形成,癌の浸潤や転移など細胞増殖が関わる動的メカニズムを細胞周期情報と同時にリアルタイムで観察する事が可能となった。Fucciを発現するブタは様々なトランスレーショナルリサーチへの利用が期待される。我々はFucci発現ブタの作出を目的とし,Fucciを発現する核ドナー細胞の樹立並びに体細胞核移植胚の発生能の検証を行った。【方法】ブタ胎仔線維芽細胞(PFF)にFucci発現ベクターをエレクトロポレーションにより導入し,Puromycinによる薬剤選択と限界希釈を経てFucciを発現する核ドナー細胞を樹立した。NCSU23を基本とする培地を用いてブタ卵丘卵子複合体から体外成熟卵を得て,除核後,体細胞核移植のレシピエント卵とした。Matsunariら(2008)の方法を修正して体細胞核移植を行い,得られた胚をPZM-5中で7日間培養して,体外発生能と蛍光発現を検証した。Fucciを導入しないPFFを核ドナーとして,対照の核移植胚を構築した。【結果】限界希釈細胞480クローンの内,細胞周期の進行に合わせて蛍光発現が変化するFucci発現細胞(G1: mCherry, S/G2/M: mVenus)を2ライン(0.4%, 2/480)樹立し,その一方を核ドナーに用いた。Fucci細胞由来胚の正常分割率と胚盤胞形成率(n=50, 76.0% と82.0%) は,対照胚(n=40, 92.5%と75.0%)と同等であった。 Fucci細胞由来胚盤胞の細胞にはmCherryおよびmVenusの蛍光が観察された。【結論】Fucciを発現する核ドナー細胞によって構築されたブタ核移植胚は,in vitroで正常に発達し,胚盤胞期にFucci蛍光を発現することが明らかとなった。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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