日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-106
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生殖工学
DNAメチル化阻害剤およびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤がブタ体細胞核移植胚の発生能に及ぼす影響
*浅野 吉則松成 ひとみ小林 美里奈内倉 鮎子中野 和明林田 豪太松村 幸奈倉本 桃子坂井 理恵子金井 貴博松田 泰輔新井 良和渡邊 將人長嶋 比呂志
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抄録

【目的】体細胞核移植胚におけるDNA高メチル化やヒストン低アセチル化などのエピジェネティック異常は,クローン産仔作出効率の低さの一因と考えられている。DNAメチル化/ヒストン修飾酵素阻害剤である5-aza-2’-deoxycytidine (5-aza-dC)やScriptaid(SCR)は様々な動物種において体細胞核移植胚の発生率向上に効果的であることが報告されている。本研究では,5-aza-dC,SCR,あるいはこれらを組み合わせた(5-aza-dC/SCR)処理がブタ体細胞核移植胚の発生能にどの様な効果を有するか比較検討することを目的とした。【方法】レシピエント卵には体外成熟卵を,ドナー細胞には体細胞クローンニングの6回反復で得られた個体(第6世代クローンブタ)から採取した前駆脂肪細胞を用いた。予備試験により,5-aza-dCとSCRの添加濃度および処理時間をそれぞれ10 nM,72時間および500 nM,17時間とした。作製した再構築胚を活性化処理した後,5-aza-dC,SCR,5-aza-dC/SCR,または無処理区を設け,PZM-5で6日間培養した。得られた核移植胚の正常分割率(Day-2),胚盤胞形成率(Day-6),および胚盤胞細胞数に対する影響を比較した。【結果】核移植胚の正常分割率は,5-aza-dC(47/56, 83.9%),SCR(45/56, 80.4%),および5-aza-dC/SCR(44/56, 78.6%)の各区いずれも,無処理区(48/56, 85.7%)と同等であった。胚盤胞形成率(30/56, 53.6% 〜 34/56, 60.7% vs. 25/56, 44.6%)および胚盤胞細胞数(63.0±5.76〜77.3±6.01 vs. 47.9±5.37)は,全ての処理区において高い傾向であった。胚盤胞細胞数のSCR区と無処理区の間には,有意差(P<0.05)が見られた。本研究で検証した5-aza-dC,SCR,および両者の組み合わせ処理が,ブタ体細胞核移植胚の発生率および胚盤胞の質を改善する可能性が示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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