日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-107
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生殖工学
ウシ体内成熟卵子および体外成熟卵子へのヒアルロニダーゼ処理が胚発生に及ぼす影響
*橋谷田 豊相川 芳雄松田 秀雄大竹 正樹今井 敬
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抄録

【目的】多排卵処置後の体内成熟卵子を用いた体外受精では,高品質胚が高率に得られる。しかし,体内成熟卵子の卵丘細胞は,著しく膨潤化し粘張性が高いため,卵子の検索が難しく見落としが多いと考えられる。これに対し,卵丘細胞を溶解する酵素処理により改善が可能であるが,卵子への悪影響が懸念される。本研究では,体外成熟により卵丘細胞が膨潤化した卵丘細胞-卵子複合体(COC)への酵素処理が胚発生に及ぼす影響について検討し,さらにOPUにより採取した体内成熟COCについて同様に比較を行った。【方法】体外成熟には,食肉処理場由来卵巣から採取した卵丘細胞が2または3層以上付着したCOCを用いた。卵丘細胞の膨潤化を促すためFSH添加あるいは無添加培地で20h成熟培養したCOCを0.1%(最終濃度0.004%)ヒアルロニターゼ添加溶液に5 min曝して酵素処理した。COCは洗浄後に体外受精に供した。また,酵素無処理のものを対照区とした。体内成熟COCは,CIDR留置,8 mm以上の卵胞の吸引除去,FSHによる多排卵処置を行い,GnRH投与後25から26h目に5 mm以上の卵胞から吸引採取した。採取液を希釈しCOCを検索して取り出した。その後,採取液の残渣を酵素処理し,再度検索しCOCを回収した。これら酵素処理前後で回収したCOCを2hの培養後に体外受精に供し,胚盤胞発生率を比較した。【結果】FSH添加培地により卵丘細胞が膨潤化したCOCの胚盤胞発生率は,酵素処理区と対照区の間で差がなかった。また,FSH無添加培地で培養したCOCの胚盤胞発生率も両区で差がなかった。一方,酵素処理後の採取液の残渣から回収総数の12%にあたるCOCが検索された。体内成熟COCの胚盤胞発生率は,酵素処理区と無処理の対照区の間で差がなかった。以上のことから,本研究で用いたヒアルロニダーゼ処理が体外成熟および体内成熟したCOCの体外受精後の胚発生に及ぼす影響は少ないことが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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