日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-109
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生殖工学
甘草抽出物ricoriceのウシ精子処理液あるいは体外受精液への添加が分割率や胚発生成績に及ぼす影響
*平田 統一田中 宏光
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抄録

【目的】漢方薬に広く用いられている甘草の抽出物の1種ricoriceは,マウス精子の体外受精前培養液に添加すると,その後の受精率を向上させることが知られている。この物質をウシ精子の体外授精前培養液あるいは媒精液に添加した場合に,分割率や胚発生成績に及ぼす影響を検討した。【方法】食肉処理場で得た卵巣から未成熟卵子を回収し,10%牛胎子血清加修正TCM-199 で約20時間成熟培養を実施した。精液は2種類の種雄牛を用い,体外受精前に市販の媒精液IVF100(機能性ペプチド研究所)で1時間前培養した。この際,前培養液に240μg/mlのricoriceを添加した区(前培養区)と加えない区を設けた。媒精はIVF100で8時間実施した。前培養時にricoriceを添加しなかったものについて,媒精時にricoriceを0(対照区), 25,250μg/ml添加した区を設けた。前培養区は媒精時にricoriceは添加しなかった。媒精後約90時間までの初期発生培養は修正CDM-1で,90時間以降の後期発生培養はIVD101(機能性ペプチド研究所)で行った。胚発生成績の評価は,媒精後48時間前後の分割率と6~8日目の胚盤胞への発生率で行った。実験は3回繰り返した。【結果】前培養区,および0, 25,250μg/ml添加区の分割率はそれぞれ61.6(151/245)および71.7(256/357),63.3(233/368),55.1(199/361)で,全培養時,媒精時にricoriceを添加しなかった対照区に比べ,前培養区(P<0.01),25区(P<0.05),250区(P<0.01)は有意に低かった。これに対し,胚盤胞率は対照区の22.4%に対して,前培養区の30.2%,25区の29.6%は有意に(P<0.05)高かった。ricoriceは受精率を改善するよりは,ウシ胚の体外発生成績を向上させると思われる。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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