日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-124
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臨床・応用技術
豚品種間の精子性状差の検討と凍結保存方法開発への応用
*西園 啓文
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抄録
【目的】現在までに,さまざまな豚精子凍結保存方法が開発され,実用化検討がなされている。われわれは,豚精子を飼育現場で簡易に凍結保存方法を開発することを目指しており,その第一段階として,国内で飼育されている代表的な豚品種の精子の性状を検討した。【方法】富山県畜産研究所にて飼育維持されている大ヨークシャー種,デュロック種,ランドレース種の雄豚より定法で精液を採取し,一定温度に保ちながら富山大学まで輸送後,各実験に用いた。始めに,単純塩類溶液として改変BTS溶液を用い,精子運動率(motility,%)を計測用チャンバーで測定した。次に,機械的ストレス処理(3000rpm,10min)した後の精子運動率を同様に測定し,運動性の減衰率(Δmotility,%)を算出した。さらに,各品種の精子を2.5%グルタルアルデヒドで固定し,洗浄脱水後,低真空走査型電子顕微鏡で観察した。また精子中片部については,MitoTracker Deep Redで染色し,共焦点レーザー顕微鏡下で解析した。【結果および考察】単純塩類溶液中37℃条件下での運動率は,ランドレース種で低く,品種間で有意な差が確認された(大ヨークシャー種:77.97±11.73%,デュロック種:78.85±15.85%,ランドレース種:48.20±14.64%)。機械的ストレス処理後の運動性の減衰率については,三品種間で有意な差はなく,遠心洗浄処理などの工程においては品種間差を考慮する必要がないことが明らかになった。電子顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡観察の結果,精子頭部長,精子頭部直径などに品種間の差異は認められなかったものの,精子全長および精子中片部直径については品種間で有意な差があることがわかった。これらの結果は,それぞれの品種に適用できる簡易豚精子凍結保存方法を開発する上で重要な知見であると思われる。
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© 2013 日本繁殖生物学会
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