日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-14
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卵・受精
マウス個体の老化が卵母細胞と卵丘細胞間のコミュニケーションに及ぼす影響
*川崎 紅藤井 渉内藤 邦彦杉浦 幸二
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抄録

【目的】一般的に哺乳類卵母細胞の質(発生能)は個体の老化と共に低下するが,老化がどのように卵子の発達に影響しているかは十分には理解されていない。卵母細胞は,周囲の卵丘細胞と密接に関わりながら発達する。一例として,卵母細胞は,卵丘細胞から供給される解糖代謝産物を基質としてエネルギー代謝をしているが,卵丘細胞における解糖活性や解糖系酵素(PFKPやLDHA等)の発現は卵母細胞が分泌する増殖因子(卵シグナル)に依存している。このような卵母細胞と卵丘細胞間の双方向的なコミュニケーションは,卵母細胞が正常に発達するのに必須である。そこで,本研究では,老化個体環境内においてこの双方向コミュニケーションが正常に機能していない可能性について,卵丘細胞におけるPfkpLdhaの発現を指標として検討した。【方法】C57BL/6N系統の若齢マウス(2ヶ月齢)と加齢マウス(7,10ヶ月齢)より卵丘細胞を採取し,PfkpLdhaの発現量をqRT-PCRで比較した。さらに,3週齢マウスより採取した卵丘細胞を,2,7,10ヶ月齢の卵母細胞とそれぞれ共培養し,卵丘細胞におけるPfkpLdhaの発現量をqRT-PCRで比較した。【結果】10ヵ月齢の卵丘細胞におけるPfkpLdhaの発現量は,それぞれ2ヶ月齢に対して約50%,45%の低下が認められた。卵母細胞との共培養下において,2ヶ月齢の卵母細胞は卵丘細胞におけるPfkpLdhaの発現をそれぞれ約9.8倍,5.6倍に上昇させたが(p<0.05),7,10ヶ月の卵母細胞では有意な上昇は認められなかった。これらのことから,老齢マウスでは,卵シグナルが減弱しており,老化することにより,卵母細胞と卵丘細胞間のコミュニケーションの機能が低下することが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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