日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-3
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内分泌
新規κオピオイド受容体拮抗剤の末梢投与がシバヤギGnRHパルスジェネレーター活動におよぼす効果
*伊藤 太祐中務 桂佑若林 嘉浩山村 崇岡村 裕昭大石 真也野口 太朗藤井 信孝上野山 賀久束村 博子前多 敬一郎松田 二子大蔵 聡
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抄録

【目的】哺乳類の繁殖機能の制御に中心的役割を果たす視床下部—下垂体—性腺軸を上位で制御する因子として,近年キスペプチンが注目されている。視床下部弓状核に存在するキスペプチンニューロンには,ニューロキニンBとダイノルフィンAが共在しており,これらのペプチドの作用により性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のパルス状分泌が制御されることが示唆されている。本研究では,シバヤギを用いて,ダイノルフィンA受容体であるκオピオイド受容体(KOR)の拮抗剤の静脈内投与が,パルス状黄体形成ホルモン(LH)分泌およびGnRHパルスジェネレーター活動の指標となる視床下部弓状核における多ニューロン発火活動(MUA)におよぼす効果を検討した。【方法】実験には卵巣除去—E2代償投与雌シバヤギ(n=5)を用いた。頸静脈に留置したカテーテルを通じて蒸留水(10 ml/h)または新規KOR拮抗剤であるPF−4455242(2.5 µmol/kg/h)を4時間にわたり持続的に静脈内投与した。投与開始4時間前から4時間後まで,6分おきに頸静脈留置カテーテルを通じて採血を行い,得られた血漿中のLH濃度をラジオイムノアッセイにより測定した。また,視床下部弓状核に記録用電極を留置した卵巣除去—E2代償投与雌シバヤギ(n=2)を用いて,PF-4455242または蒸留水の持続投与の前後を通じてMUAの記録を行い,MUAの一過性の活動上昇(MUAボレー)頻度におよぼす影響を検討した。【結果および考察】PF-4455242投与群では,持続投与中のLHパルス頻度が亢進し,投与開始直後から基底LH濃度の上昇が確認された。また,投与前に比較してMUAボレー間隔が短縮していることが確認された。以上の結果より,GnRHパルスジェネレーターの活動が,KORを介してダイノルフィンAにより抑制されることが示唆された。また,末梢に投与された新規KOR拮抗剤は,中枢に作用することにより,GnRHパルスジェネレーター活動を促進することが明らかとなった。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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