日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-4
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内分泌
幼若期雄マウスへのDES投与による遅発性の中枢および生殖機能影響
*須藤 龍也平賀 孔平舘 裕希斉藤 洋克井上 弘貴種村 健太郎
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抄録

【目的】エストロジェン受容体(ER)を介したシグナル伝達系は主に雌性生殖器の発生発達や成熟後の機能調節に必須であるばかりか,雄性生殖機能や中枢機能についても重要な役割を演じている。一方で,合成エストロジェン等の化学物質によるERシグナルかく乱は,こうした機能への異常を誘発する危険が指摘され,例として胎生期における合成エストロジェン暴露が乳がん発生リスクを高めることが知られている。そこで,本研究では幼若期雄動物における一時的なERシグナルかく乱が中枢機能および生殖機能に与える影響を検討する。【方法】生後2週齢のC57BL/6雄マウスに合成エストロジェンであるDES(Diethylstilbestrol)をモデル化学物質として1mg/kgにて単回強制経口投与した(溶媒はDMSOおよびコーンオイルを併用した)。生後7週齢から8週齢にかけて,オープンフィールド試験,明暗往来試験,恐怖条件付け学習記憶試験からなるバッテリー式の行動解析を行った後,SMASを用いて精巣上体精子の運動性解析を行い,脳および精巣については形態解析を行った。【結果と考察】中枢機能影響として,行動解析の結果,DES投与群において不安関連行動の逸脱と学習不全,そして海馬依存性が高いとされる空間連想記憶の異常が認められた。一方,生殖機能影響として,精巣上体精子の運動性に異常は認められず,またHE染色による形態観察から精子発生はほぼ正常と考えられた。以上の結果から,幼若期におけるERシグナルかく乱は,雄生殖機能に重篤な影響を及ぼさないものの,中枢機能に異常を誘発する危険が指摘された,今後,異常行動に対応する脳の責任部位を明らかにする必要がある。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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