日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-34
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生殖工学
マウス体細胞クローン胚の発生に及ぼすビタミンCの効果
*田島 陽介伊佐治 優希後藤 奈々今井 裕山田 雅保
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抄録

【目的】ビタミンC(VC)は様々なエピジェネティック調節によってiPS細胞の樹立効率を大きく改善することが報告されている。一方,VCの体細胞クローン胚への影響についてはブタの産仔率を改善すること以外詳細には検討されていない。本研究では,マウス体細胞クローン胚の発生に及ぼすVCの影響を検討した。【方法】B6D2F1マウスの除核未受精卵と卵丘細胞から作出した再構築胚を0–50 µg/ml VCで活性化開始(0時)から24時間処理を行い,胚盤胞形成率及びその細胞数から至適濃度を定めた。次に,再構築胚を0–8時,0–24時あるいは8–15時に至適濃度のVCで処理し,各処理区における胚盤胞形成率,そして前核期におけるアセチル化H3K9レベルを免疫蛍光染色法で検討した。さらにVC処理による産仔率への影響を検討した。【結果】10,25,50 µg/ml VCで24時間処理を行った結果,胚盤胞形成率はいずれの濃度においても7割強と無処理より有意に上昇した。また胚盤胞の総細胞数及びICM細胞数は無処理より有意に増加し,10 µg/mlではTE細胞数も有意に増加したため,以降この濃度で用いた。次に VCの処理時期について検討した。0–24時,8–15時の処理では無処理と比較し胚盤胞形成率が有意に上昇した(69%, 71% vs 36%,P<0.01)が,0–8時の処理では52%と有意差はなかった。ところが,前核期におけるアセチル化H3K9レベルは0–8時のVC処理によってTSA処理(50 nM,0–8時;胚盤胞形成率77%)と同程度まで上昇した。これらのことから,発生のごく初期におけるアセチル化H3K9レベルはクローン胚の発生に影響しない可能性が示唆された。またクローン産仔は無処理胚からは得られなかったが,VC処理(24時間)胚から2%,TSA処理胚から3%の割合で得られた。以上の結果から,VCはTSAとは異なる作用機構によってマウスクローン胚の発生を促進することが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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