日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-35
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生殖工学
卵子由来のXistのインプリントは着床期マウス胚から完全に消失する
*及川 真実井上 貴美子的場 章悟志浦 寛相上村 悟氏越後貫 成美廣瀬 美智子田中 智阿部 訓也石野 史敏小倉 淳郎
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抄録

【目的】XistはX染色体不活性化の開始に必須の遺伝子である。マウス初期胚において,Xistは精子由来X染色体でのみ発現を示す(インプリント型発現)。以前我々は,核移植技術を用いて,卵成長の最終期にXistの発現を抑制するインプリントが確立されることを報告した。Xistのインプリントは,胚盤胞期になると内細胞塊で一旦消失し,胚体組織においてXistはランダム型発現を示すようになる。一方,栄養外胚葉(TE)から分化した胚体外組織においては,Xistはインプリント型発現を示す。これは卵子由来のXistのインプリントがそのままTEに引き継がれるためだと考えられているが,証明はされていない。そこで,本研究では着床後のマウス胚における卵子由来のXistのインプリントの消長を検証した。【方法】卵子由来のXistのインプリントを持たない細胞を除核卵子に核移植すると, Xistは異所的発現を示すという性質を利用して解析を行った。着床後のマウス胚の細胞として,ES細胞,栄養膜幹(TS)細胞,および胎齢6.5日胚の胚体外組織細胞を用いて核移植胚を作製した。核移植胚は培養72時間目(morula期)および96時間目(blastocyst期)まで発生させ,RNA-FISHあるいはマイクロアレイによりXistの発現を解析した。【結果】ES細胞核移植胚において,Xistは異所的発現を示した。ES細胞においてXistのインプリントは消失することが知られており,この結果はこれまでの報告と一致した。一方で,TS細胞および胚体外組織細胞の核移植胚においてもXistの異所的発現が見られ,卵子由来のXistのインプリントは胚体外組織においても消失することが明らかになった。以上の結果は,卵子由来のXistのインプリントは着床期に完全に消失し,胚体および胚体外組織のいずれにおいても新たなXistの発現制御機構が確立されることを示唆する。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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