日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-66
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精巣・精子
ウシ一側性潜在精巣における細胞死関連遺伝子発現解析の試み
*武田 久美子金田 正弘田上 貴寬韮澤 圭二郎渡邊 伸也
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抄録

【目的】潜在精巣は精巣下降の欠如により発生し,ブタ,イヌ,ウマで多くみられ,ウシでは比較的発生頻度が低い(0.2%)。潜在精巣はステロイドホルモン産生能を有するが,体温により精子形成障害を起こすとされる。当研究所にて飼養しているホルスタインについても一側性潜在精巣の症例が発生した。本研究では,この雄牛についてもう一方の正常な精巣と比較して細胞死関連遺伝子発現およびミトコンドリアタンパク質発現に違いがあるかどうかを検討した。【方法】6ヶ月齢の一側性潜在精巣のホルスタイン(H1),10歳齢の黒毛和種(B1),3歳齢の黒毛和種 (B2),5ヶ月齢の黒毛和種(B3)の双方の精巣からmRNAを抽出した。細胞死関連遺伝子13–15種類について,Lightcyclerシステムを用いたリアルタイムPCRによりその発現量を比較定量し,個体ごとに左右精巣の発現量の比較を行った。また,潜在精巣を示したH1の双方の精巣よりミトコンドリア分画を精製し,タンパク質を溶解後Ettan DIGEシステムによる2次元電気泳動スポットの比較解析を行った。【結果】H1については正常と潜在精巣間での発現量に2倍以上違いがみられる遺伝子が数種類(MnSOD, BAX等)検出された。一方,B1~B3について調査した遺伝子発現量に2倍以上違いがみられるものは2–3個と少なかった。また,ミトコンドリアタンパク質についてEttan DIGEシステムの解析結果,2倍以上の発現量差異のあるスポットが検出された。以上の結果より,潜在精巣ともう片側の正常な精巣との間に細胞死関連遺伝子発現に差異が検出されることが示唆された。今回は1例の結果であるため,今後更に例数を重ねた検討を要する。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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