日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-78
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卵・受精
排卵後の体外加齢がマウス卵子の胚盤胞期におけるCdx2発現と着床能に及ぼす影響
*下井 岳林 雅人工藤 謙一亀山 祐一橋詰 良一
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抄録

【目的】排卵後の体外加齢が卵子の受精能や初期発生能に影響することはよく知られている。我々は,体外加齢卵子に由来する受精卵の胚盤胞期において,着床後に胚体外組織に分化する栄養外胚葉(TE)細胞の減少を報告した。TEの出現は受精卵における初期分化であり,2つの転写因子Oct3/4およびCdx2が関与している。特にTEへの分化にはCdx2の発現が必須であり,胚盤胞期のTE細胞の減少から,加齢卵子ではCdx2の発現量が胚レベルで低下していることが懸念された。そこで,本研究は体外加齢卵子由来の胚盤胞におけるTE分化能についてCdx2の発現から検証し,これらの胚を移植することで胚の着床能について検証した。【方法】B6D2F1マウスに過排卵を誘起して未受精卵を得た。採卵後,培養気相内で12 h静置したものを体外加齢区,採卵直後の新鮮卵子を対照区として以下の操作を行った。0.1%ヒアルロニダーゼで卵丘細胞を除去後,定法に従い卵細胞質内精子注入(ICSI)を実施した。得られた受精卵の一部は,72 h培養して桑実胚を受卵雌の子宮内に移植した。残りの受精卵は,96 h培養して胚盤胞期にCdx2の発現解析を行った。Cdx2の発現は,胚盤胞からtotal-RNAを抽出し,リアルタイムPCRにてSYBR Greenを用いたインターカレーションアッセイで定量した。【結果】受精後96 hにおいて,体外加齢区の胚盤胞におけるCdx2発現量は,対照区の胚盤胞と比較して顕著に低値を示した。そこで,受精後120 hで比較したところ,体外加齢区ではCdx2の発現量が急激に増加し,両区間で差は認められなかった。これらの胚を子宮内に移植したところ,着床率は体外加齢区および対照区でそれぞれ10.4%(15/144),38.8%(83/244)であり,体外加齢区で有意に低値を示した。以上の結果,排卵後の卵子の体外加齢は,受精後の胚盤胞期におけるCdx2発現量の減少と発現時期の遅延を引き起こし,着床に影響することが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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