日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-81
会議情報

卵・受精
高温成熟条件がウシ卵子および受精卵のTETs,DNMTs発現に与える影響
*阪谷 美樹高橋 昌志竹之内 直樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景】初期胚発生にエピジェネティックな遺伝子発現制御が密接に関わっており,DNAメチル化パターンやTen eleven translocation genes (TETs)による5メチルシトシンの水酸化が受精の成立や正常胚発生に重要なことが指摘されている。ウシでは高温成熟条件が卵子成熟や初期胚発生を阻害するが,これらの発生阻害とエピゲノム状態に関する報告はほとんどない。そこで高温成熟条件がウシ卵子および体外受精後の発生胚におけるTETsとDNMTsの発現パターンを解析した。 【方法】屠場由来卵巣より採取した卵子を体外成熟(38.5℃),受精させて得られた成熟卵子,zygote,2,8細胞期胚,桑実胚,胚盤胞各15個からmRNAを抽出し,定量PCRにてDNAメチル基修飾に関連する遺伝子(TET2, TET3, DNMT1, DNMT3A, DNMT3B)のステージ別発現量をΔCT法(成熟卵子=1)で解析した。また,通常区(38.5℃),高温区(40℃)で成熟培養したウシ受精卵について同様の遺伝子発現と体外受精による発生能に関して検討を行った。 【結果・考察】胚の発生ステージ依存的に遺伝子発現に差が認められた。すなわち,TET2,3並びにDNMT1は成熟卵子期~8細胞期まで高発現であり,桑実胚,胚盤胞での発現は有意に低かった。一方DNMT3Aは8細胞期,胚盤胞期で高く,DNMT3Bは成熟卵子,zygote,胚盤胞で高い発現を示した。高温成熟培養により卵子成熟率,発生培養2日目の8細胞期以上発生率および7日目の胚盤胞発生率は有意に低下した。また,TET2は処理区間の差が認められなかったが,zygoteで高温区のTET3, DNMTsの発現量が有意に増加し,反対に8細胞期胚ではTET3の発現量が有意に低下した。以上の結果から高温成熟培養によりウシ初期受精卵のエピゲノム状態も影響を受ける可能性が示唆された。現在も研究を継続中である。本研究は平成24年度旗影会研究助成金で実施された。

著者関連情報
© 2013 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top