日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-80
会議情報

卵・受精
発生培地へのインターロイキン-6添加がブタ胚の体外発生に及ぼす影響
*鈴木 千恵櫻井 優広野口 倫子吉岡 耕治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】インターロイキン(IL)-6は,単核球,リンパ球,線維芽細胞及び子宮内膜細胞等で産生される多機能性のサイトカインである。近年,マウス体外受精胚あるいはブタ単為発生胚において,血清含有培地へのIL-6添加が胚発生を促進することが報告されている。本実験では,ブタ体外受精胚の体外発生時における完全合成培地へのIL-6添加が胚発生に及ぼす影響について検討した。【方法】既報に従い,体外成熟・体外受精を行った。媒精後10時間後に卵丘細胞を除去した胚を種々の濃度でIL-6を添加した培養胚発生用培地(PZM-5)で培養し,胚発生率及び胚盤胞の細胞数を計測した。次に,媒精後の胚を0あるいは10 ng/ml IL-6添加培地で培養し,媒精後5日目の胚盤胞の内部細胞塊(ICM)と栄養外胚葉(TE)細胞数を,ヘキスト33342とプロピウムイオダイドを用いた二重染色法により計測した。さらに,媒精後5日目に得られた胚盤胞を0あるいは10 ng/ml IL-6を添加した後期胚培養用培地(PBM)で継続培養し,媒精後6及び7日目の胚盤胞の生存率及び孵化率と,媒精後7日目の胚盤胞の総細胞数及びアポトーシス指数(総細胞数に対するアポトーシス陽性細胞数の割合)を解析した。アポトーシス細胞はTUNEL法にて検出した。【結果および考察】媒精した胚を,0,1,10,100 ng/ml のIL-6添加培地で培養すると,2日目の分割率及び5日目の胚盤胞への発生率に差は認められなかったが,胚盤胞の総細胞数は10あるいは100 ng/ml添加により,無添加および1 ng/ml添加と比較して有意に増加した。媒精後5日目の胚盤胞のICM,TE細胞数及びICM/総細胞数比は,無添加と比較して有意に増加した。媒精後6日目の完全孵化率及び7日目の部分的孵化率と総細胞数は無添加と比較して有意に高く,アポトーシス指数は有意に低い値を示した。これらの結果から,完全合成培地へのIL-6添加はブタ胚の体外発生において,胚盤胞の細胞数及び孵化率を増加させることが明らかとなった。また,IL-6は胚盤胞のアポトーシスを抑制して胚発生を促進している可能性が示された。

著者関連情報
© 2013 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top