日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-83
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卵・受精
Amphiregulinおよびbone morphogenic protein 15のウシ卵母細胞の発育能および卵丘細胞の機能への協調的関与
*杉村 智史RITTER J. LesleySUTTON-MCDOWALL L. MelanieMOTTERSHEAD G. DavidTHOMPSON G. JeremyGILCHRIST B. Robert
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抄録

【目的】Amphiregulin (AREG)およびrecombinant human bone morphogenic protein 15 (rhBMP15)のウシ卵母細胞の発育能および卵丘細胞の機能への影響を解析した。【方法】rhBMP15無添加もしくは添加培地にFSHもしくはAREGを添加した。体外成熟培養後,体外受精を行い発生能を評価した。卵丘細胞の卵丘膨化,グルコース代謝,卵母細胞内のNAD(P)HとFAD++含量,および卵丘細胞-卵子複合体(COCs)のギャップ結合(GJC)を解析した。【結果】rhBMP15無添加区においてFSHは卵母細胞の体外発生を改善させた。一方,AREGはrhBMP15添加区において発生能を改善させた。rhBMP15の有無に関わらずAREGはFSHに比べ卵丘膨化が弱く,HAS2発現の増加も認められなかった。FSHおよびAREG共にCOCsにおけるグルコースの取り込み,および乳酸の生産を刺激したが,FSHに比べAREGで乳酸/グルコース比が高かった。これらは,FSHとは異なりAREGの刺激によって取り込まれたグルコースは卵丘膨化というよりは解糖系を介してより効率的に代謝されたことを示唆している。rhBMP15無添加区において卵母細胞内のNAD(P)HおよびFAD++含量に変化は認められなかったが,rhBMP15添加区においてAREGはそれら代謝補酵素を増加させた。卵丘細胞を裸化もしくは裸化した卵母細胞とCOCsを共培養した場合にこれら変化は認められなかったことから,卵母細胞内の代謝補酵素の増加は卵丘細胞からのGJCを介した結果であったと推察される。FSHはrhBMP15の有無に関わらず,3時間でのGJCの開口が認められた。一方,AREGはrhBMP15添加区でGJCの開口が認められた。以上,AREGはrhBMP15と協調的に卵丘細胞での代謝産物をGJCを介し卵母細胞内へ効率的に輸送することで,その後のウシ卵母細胞の発生能を改善させることが示された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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