日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-85
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性周期・妊娠
黄体の存在する卵巣と同側のウシ子宮角における子宮内膜P4濃度とProgesterone Receptor Membrane Component-1(PGRMC1)発現との関係
*高橋 啓人羽田 真悟松井 基純
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抄録

【目的】黄体の存在する卵巣と同側の子宮角(同側角)に胚移植を行うと,受胎率が高い事が知られている。また,子宮内膜組織中プロゲステロン(P4)濃度は同側角で高いことが知られている。P4は妊娠成立に重要な役割を担っており,同側角は黄体の存在する卵巣と反対側の子宮角(反対側角)と比較して,受胎に適した環境を有していると考えられる。マウス子宮内膜においてPGRMC1の発現は,P4によりその発現量が変化し,細胞の機能や形状の周期的変化に影響を与えていると考えられている。一方,ウシ子宮内膜におけるPGRMC1の発現と機能については知られていない。本研究では,発情周期におけるウシ子宮内膜組織中P4濃度とPGRMC1発現を調べ,同側角と反対側角を比較した。【方法】と畜場由来の子宮を,卵巣の形態に基づき3つの時期(黄体形成期・黄体開花期・卵胞期)に分類した。さらに,機能的黄体あるいは退行黄体の存在する卵巣と同側角および反対側角に分類した。それぞれの子宮内膜を採取し,子宮内膜組織中P4濃度(内膜P4濃度)と,PGRMC1のmRNA発現を調べた。さらに,TUNEL法を用い,子宮内膜におけるアポトーシスの発現を調べた。【結果】同側角では,形成期において,内膜P4濃度およびPGRMC1のmRNA発現が高かった(p<0.05)。また,内膜P4濃度とPGRMC1のmRNA発現には正の相関(r=0.83,p<0.01)が認められた。一方,反対側では,内膜P4濃度およびPGRMC1のmRNA発現に,発情周期による差異は見られなかった。同側角において,形成期に子宮内膜細胞のアポトーシス発現が低い傾向が認められた。【考察】同側角では,子宮内膜組織中P4濃度とPGRMC1発現は形成期に高く,両者に正の相関が認められたことから,PGRMC1を介したP4によるアポトーシス抑制などの機能が増強されていると考えられた。また,P4によりPGRMC1発現が亢進している可能性が示された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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