日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-88
会議情報

性周期・妊娠
リピートブリーダーおよび正常に受胎する牛における子宮内膜遺伝子発現の網羅的解析による比較
*林 憲悟作本 亮介細江 実佐木崎 景一郎橋爪 一善高橋 透
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】リピートブリーダー牛(RB牛)は,「生殖器,発情周期,臨床徴候に異常を認めないが3回以上授精しても妊娠しない牛」と定義される。空胎日数の延長は生産性低下に直結するが,抜本的な解決策は見出されていない。本研究は,RB牛および正常に受胎する牛(正常牛)の黄体期における子宮内膜の遺伝子発現動態を,マイクロアレイを用いて網羅的に解析し,ウシ子宮内膜において受胎性に関わる遺伝子を探索することを目的とした。【方法】本研究所で飼養された黒毛和種経産牛のうち,正常に発情周期を回帰するが3回以上人工授精(AI)しても不受胎だった個体をRB牛とした(4頭)。正常牛(4頭)は,AIから30日目に超音波診断装置で受胎を確認して人工流産させた後,発情周期を2回以上回帰させた。各牛群は発情周期の15日目(発情日=0日)にと殺し,黄体側と非黄体側子宮角の子宮小丘および子宮小丘間内膜を採取した。組織から総RNAを抽出後,15kウシオリゴDNAマイクロアレイにより遺伝子発現を解析し,データマイニングソフト(GeneSpring GX)を用いてバイオインフォマティクス解析を行った。【結果】RB牛の子宮小丘における遺伝子発現は,黄体側では正常牛と比較して高発現な128遺伝子と低発現な277遺伝子が同定され,非黄体側では,高発現な333遺伝子と低発現な110遺伝子が同定された。これらの遺伝子のうち,RB牛で最も発現の高かった既知遺伝子は,有害物質の無毒化や排泄に関与する酵素であるGlutathione S-transferase A3であった。一方,RB牛の子宮小丘間内膜における遺伝子発現は,黄体側では正常牛と比較して169遺伝子が高発現で,228遺伝子が低発現であり,非黄体側では,121遺伝子が高発現で136遺伝子が低発現であった。以上より,RB牛の子宮内膜では正常牛と比較して特異的に発現が変化している遺伝子の存在することが明らかとなり,これらの遺伝子発現動態が不受胎と関連している可能性が示された。

著者関連情報
© 2013 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top