日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-89
会議情報

性周期・妊娠
ウシ末梢血に発現する妊娠成立関連遺伝子の探索
*菊地 美緒松田 秀雄茂野 智子橋谷田 豊今井 敬平田 統一木崎 景一郎橋爪 一善
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】授精後ウシ末梢血顆粒球には,妊娠情報に関連する遺伝子群が発現することから,血中遺伝子発現動態を検出することにより妊娠成立の予知が可能である。その由来は,胚の栄養膜細胞が産生,分泌する妊娠認識シグナルであるインターフェロンτ(IFNT)と考えられている。末梢血球には多数の遺伝子情報が含まれており,直接IFNTと関連しない遺伝子群の妊娠成立過程との関わりは明らかでない。本研究では,マイクロアレイにより得た末梢血白血球中に発現する遺伝子データを精査し,既知のIFNT関連遺伝子の他に妊娠の成立と関わる遺伝子が存在するかを検討した。【材料及び方法】人工授精当日(AI0),受精後21日(AI21),胚移植日(ET7),移植後14日(妊娠21日に相当,ET21),ET24に白血球を採取,遺伝子発現を解析したマイクロアレイデータを用い,関連する遺伝子を抽出した。抽出した遺伝子の発現動態をAI0, AI14, AI21, ET7, ET14, ET21及びET24の各日に採取した顆粒球中の遺伝子発現をRT-PCR並びにQRT-PCRにより検証した。【結果】マイクロアレイデータから,AI0と比較してAI21で末梢血白血球中に発現が上昇したのは24遺伝子,ET7と比較してET21で発現が上昇したのは213遺伝子であり,両者で共通して発現が上昇したのは7遺伝子であった。その遺伝子群にはOAS1及びISG15が含まるが,他はこれまで未検証の遺伝子であった。既知のISG15, MX1, MX2及びOAS1の4遺伝子の検証ではAI21, ET24から妊娠判定が可能であり,早期胚死滅が疑われる事例でも4遺伝子による判定が可能であった。新規ESTの検証では,妊娠21日において2遺伝子の上昇を認めた。以上のことから,末梢血白血球中には,IFNTに関連する既知の4遺伝子以外にも妊娠成立に伴い発現が上昇する遺伝子の存在することが示唆された。

著者関連情報
© 2013 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top