日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-99
会議情報

生殖工学
受胚雌へのPlacental Lactogen(PL)投与がマウスクローン胚の体内発生能に及ぼす影響
*松下 淳加藤 容子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】クローン胚を移植後の受胚雌は,妊娠の成立・維持に必要なホルモンの血中濃度が異常になることが報告されている。我々は,クローン胚を移植後,受胚雌にhCGまたはプロラクチンを投与,受精卵と共移植,免疫抑制剤を投与すると,発生能が若干改善されたことを報告しているが(第54回日本卵子学会など),妊娠中期以降の発生能は低いままである。そこで本研究では,マウスにおいて妊娠中期以降の黄体機能維持に働くPlacental Lactogen (PL)を受胚雌に投与することでクローン胚の体内発生能が向上するか否か検討を行った。また,血中プロゲステロン濃度を測定した。【方法】過剰排卵処置を施したBDF1雌マウスをICR雄マウスと交配させ,hCG投与20時間後に前核期受精卵を回収した。同様に,hCG投与14~15時間後にMⅡ期卵を回収し,除核したものをレシピエント卵とした。卵丘細胞をドナー細胞核とし,直接注入法を用いて核移植を行った。その後,クローン胚に活性化を付与し,2細胞期まで体外培養を行い,翌日,得られた受精卵由来2細胞期胚と核移植由来2細胞期胚を受胚雌の異なる卵管に移植した。次いで,偽妊娠9.5日目~17.5日目の期間,0.15,0.3,0.6 μg/g ヒツジ由来PL(oPL)を24時間間隔で毎日筋肉内投与を行い,18.5日目に開腹検査を行った。また,受胚雌の血中プロゲステロン濃度はEIA kit (Cayman)を用いて測定した。【結果】偽妊娠9.5–17.5日目まで受胚雌にoPLを投与したところ,クローン胚の着床数・胎子数に各濃度間で大きな差は認められなかった。一方,得られた生存胎子の体重を測定したところ,対照区と比較して有意に重い値となった(1.372g (対照区) vs. 1.758g (0.3 μg/g),1.819g (0.6 μg/g))。また,共移植を行った受精卵でも,着床数・胎子数に差は認められなかったが,生存胎子の体重は対照区と比較して有意に重い値となり(1.499g (対照区) vs. 1.767g (0.6 μg/g)),oPLが母体内で成長ホルモン様の働きをしたと推測できる。なお,受胚雌の血中プロゲステロン濃度は現在検討中である。

著者関連情報
© 2013 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top