日本繁殖生物学会 講演要旨集
第107回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-33
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内分泌
ラット性行動の発現制御におけるキスペプチンの役割
*中村 翔上野山 賀久池上 花奈田村 千尋三宝 誠平林 真澄束村 博子前多 敬一郎
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抄録
視床下部に発現するキスペプチン(Kiss1)はGnRH分泌を介して生殖機能を制御することで注目を集めている。Kiss1ノックアウト(KO)ラットでは,性腺刺激ホルモン分泌が欠如し,性腺は萎縮する。これに加え,Kiss1 KOラットのオスは,周生期に野生型と同様のテストステロン分泌を示すにもかかわらず,成熟後にはオス型性行動を示さずメス型性行動のロードシスを顕著に示す。本研究では,このようなKiss1 KOラットのオスの性行動の異常が,周生期におけるキスペプチンの欠如によるか検証するため,Kiss1 KOラットの周生期にキスペプチンを皮下投与した。その結果,成熟後のKiss1 KOラットのオスでは野生型のオス同様にロードシスが抑制された。また,オス型性行動は回復しなかった。これらのことからキスペプチンは性行動中枢の脱メス化に必要と考えられる。次にKiss1 KOラットのオス型性行動の消失が,性成熟期に分泌されるテストステロンの欠如によるか検証するため,32日齢からテストステロンの連続投与を行った。その結果,Kiss1 KOラットのオスは成熟後にオス型性行動のマウントおよび挿入を示した。このことから,キスペプチンは性成熟期にテストステロンの分泌を促すことによって,オス型性行動の形成に関与すると考えられる。以上,本研究の結果から,キスペプチンはオスにおいて,周生期の性行動中枢の脱メス化に必要不可欠で,性成熟期にはテストステロン分泌を促進することにより成熟後のオス型性行動の発現に関与することが示唆された。これまで注目されてきた生殖内分泌系のみならず,性に特有の性行動を発現するためにも重要な役割を有することが明らかとなった。
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© 2014 日本繁殖生物学会
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